玩具





 学校の敷地内の東側にある用具倉庫。

 普段使われない備品などが仕舞われているプレハブ製の小屋には常に錠が下ろされており、こんな場所に用のある人間はもとより少なく、まして昼休みもそろそろ終わり、午後の授業が開始されようというこの時間帯、あたりに人の影はまったくない。
 僕は鍵のかかった倉庫の入り口を過ぎ、その裏手へと足を向けた。
 倉庫の裏手は公道だが、高い塀に囲われているうえ、等間隔に背の低い杉が植林されているので簡単には覗けない。さらにその公道も細い路地道で、生徒の登下校時以外は人通りが極端に少なく、其処から誰かの目に付くことは可能性としては殆どゼロと云っていいことを、僕は良く知っている。

 倉庫と塀とのわずかばかりの隙間に踏み入ると、目当ての人物は居た。

 「ああ、居たね」
 音を立てないように近づき、わざと明朗な調子で声をかけると、地べたにうずくまっていた彼は、可哀想なくらい身体をびくつかせてその顔を上げた。
 「夜、神…く……」
 なにかに追い詰められているような憔悴しきった表情でこちらを見上げ、声の主が僕であることを視認するやいなや、その目にたちまち涙が溜まり始める。
 その切迫した様相に、僕は笑ってゆっくりと歩み寄った。


 「ちゃんと言いつけは守れた?……先生」






 竜崎先生。
 僕の通う高校の新任教師で、僕のクラスの副担任兼、科学担当。

 そして、僕の恋人。

 先生が赴任してきて以来密かに思いを寄せ続けていた僕は、と或る日、ひょんな切っ掛けでその憧れの先生を手に入れることに成功した。
 二十三歳で僕より六歳年上。
 我が物に出来ようはずもなかった先生を、僕は抱いた。

 恋人同士となった僕らの秘密の逢瀬は専ら学内だ。
 プライベートで生徒と頻繁に会うのはまずいと云うので致し方ないことだが、昼休み、授業中、放課後、休み時間、場所をも問わず可能な限り、暇さえあれば僕は先生のもとへ足繁く通いその身体に触れた。
 感じ易く、簡単に僕の手管に溺れ、乱れる先生は想像以上に可愛く淫らで、僕はますます先生を愛おしく思い、先生もまたそんな僕の気持ちに応えてくれた。


 でも、いつからだろう。
 「あなたが好きです」と幸せそうに微笑む、僕の可愛い大切な先生に、
 こんな暗い嗜虐心が芽生え始めたのは。






 「偉いね、先生。ちゃんとひとりでここまで来れたんだ」

 倉庫の壁にもたれてうずくまったままの先生の前にしゃがみこみ、こどもにするように優しく告げる。先生が涙で潤みきった目を、すがるように僕に向けてきた。
 「…、早く……は、ずして、下さい……やがみく…」
 苦しそうに眉をたわませ、小さなか細い声で哀願する先生の頬を指の背で辿る。それだけでも刺激になるのか、先生の肩がひくりと揺れた。
 「誰にもばれなかった?
 校内でそんな顔してたら皆にわかっちゃうよ」
 からかうような手つきで微かに震えるくちびるを撫でると、とうとう先生の目から湛えきれなくなった涙が零れはじめた。

 「お願……外し………とって、くださ…っ」

 ひっ、としゃくりあげるように泣き出した先生の、頬を伝う涙を舐めとる。
 優しくあやすように抱きしめてやると、先生がぎゅっと僕の背中に手を廻し、強くしがみついてきた。
 「もう限界?」
 耳元で囁いた問いに、ぶるりと背筋をふるわせながら先生が何度も首を頷かせる。
 その余裕の無い様子に、僕は笑んで身体をはなした。

 「仕方ないな。じゃあ、脱いで」

 しずかに、且つ命令の意図を含んだ声音で告げると、先生は躊躇うように視線をさ迷わせつつも、僕の云うとおり素直にベルトに手をかけた。そのまま緩慢な動作で下衣のみをすべて脱ぎ去る。
 「ひらいて。足」
 白い脚も露わになった先生の、慎ましく閉じ合わせられた膝を手のひらで掴んで促すと、先生は真赤な顔を隠すようにうつむかせて背後の壁に背中をつけ、手を後ろ手について、おずおずとその足を開いた。
 晒された内股の奥に、おもむろに手を伸ばす。
 「ッ、ん…!」
 ぐ、と半ば乱雑に指を後口にもぐらせると、先生が不自然に息をつまらせた。確かめるようにぐるりといりぐちを回すように撫でると、その度にびくびくと太股が震える。
 僕の指を浅くくわえこんだ其処は、すでに解け濡れて熱を持っていた。赤い柘榴のような内壁が淫靡に誘い、口を開けているのが見て取れる。
 「ふっ……、うぅ…」
 唇を噛みしめて刺激に耐える先生のこめかみにやさしく口づけると、さらに指をわざとゆっくり奥まで侵入させる。
 こつりと、指先に硬いものが触れた。
 「あった」

 小さな卵型の球体。
 さほど質量は無いが、体内で微かな音を立てて振動しているその異物を、先生のせまい内道は食いしめるように深く飲み込んでいた。

 一時間前、昼休みが始まってすぐ。
 僕が中に埋めた玩具。

 興味本位で用意したそれを、先生の化学準備室で、泣いて嫌がる先生をデスクに押さえつけて、慣らしてもいない其処に無理やり挿入した。

 わざと悦いところにあたる位置で弱くも振動する無機物の刺激に、立っていることも出来ずに「とって」と泣きじゃくる先生の耳元で、僕は『外して欲しかったらこの時間、此処に来るように』と命じた。そのまま教室に戻り、昼休みが過ぎるまで一時間。
 従順にも僕の言葉どおり、先生はこの人目のない用具倉庫の裏まで来て、こうして僕を待っていた。後口を玩具に苛まれたまま。
 こんな状態で生徒で溢れかえった昼休みの校舎を抜け、此処まで歩いてきたというだけで、真面目で無垢な先生には耐え難い苦痛だったと思う。僕にはそれがわかっていたうえで、先生にそうさせた。

 「ちゃんと一時間、我慢したんだね。センセイ」

 ひくつく後ろを指でまさぐりながら、空いている片手で、すでに限界まで固く張り詰め蜜をこぼしている先生の性器に指を絡める。
 「ん、あ…ッ」
 すこし握りこんだだけで、過剰に背を仰け反らせて喘ぐ先生の其処はすでに、とろとろととめどなく溢れてくる半透明の粘液でぬかるんでいた。指をわずかでも動かすと、くちくちと鳴る卑猥な水音が耳をつく。
 先走りの滴に塗れてはいるものの、其処には射精したような跡は無い。
 指先で先端をこじ開けるように軽くつつくと、緩慢な刺激にもいちいち引き攣れる先生の身体に合わせるように、内部に留めた指を柔い襞がひくひくと締めつけてきた。

 「一度も出さなかったんだ。こんなオモチャじゃイけなかった?」

 揶揄めいた口調で耳朶を嬲ると、先生が嫌々をするように首を振る。こたえを促すように耳裏までぬらりと舌を這わせると、半分だらしなく開いたくちびるの隙間から、熱っぽい吐息とともに上擦った言葉が絶え絶えにこぼれおちた。
 「……って、夜、神くんが、……イったら、駄目、だって……ッ」
 「僕がそう云ったから我慢したの?」
 顔をうつむけたままこくんと首を頷かせる先生に、くちびるの片端をゆがめて微笑むと、その目尻に溜まった涙をやさしく舌で拭った。

 「いい子だね。
 ……ご褒美に、たっぷりイかせてあげるから」

 その細い脚を抱え込むように大きく割り、腰を突き出させるような体勢をとらせると、先生は期待とも羞恥ともとれる表情でぎゅっと目を閉じ、せつなく喉を鳴らした。
 「先生、スイッチ持ってるでしょ。出して」
 絶えず後ろに埋めこんだ指で内壁をゆるく翻弄しながら囁く。緩慢な悦楽に嗚咽するような呼吸を繰り返していた先生が、云われたとおり白衣のポケットから、震える手でそれを取り出した。

 先生を昼休み中苛んでいた玩具のスイッチは、その間ずっと先生の手元にあった。
 僕がコレを先生のポケットに仕舞って、化学準備室を後にしてからずっと。
 いくらでもスイッチを切ることが出来たのに、それでも先生がコレに触れずにいただろうことは、僕には容易に推測できる。


 だって僕が駄目だって言ったから。


 『昼休みが終わったら外してあげる』と云うことは、つまりは『昼休みが終わるまではこのままでいろ』という暗の命令。先生にはそれが分かっている。だから例え僕の目があろうと無かろうと、玩具は止められないし、イくこともできない。


 先生は僕に逆らわないし、裏切れない。嘘を吐くことすら出来ない。
 そんな風に教えこんだのは、僕だ。


 「ん、ん…ッ、…あぁ…!」
 くちゅくちゅと淫らな音を立てて指で襞をこすりたてながら、もう片方の手で性器の茎をぬるりと扱き上げると、下向いていた先生の顔が弾かれるように仰いだ。
 時折伸ばした指先が振動を続ける玩具にあたって位置がずれ、それがまた別の性感を刺激する。先生は涙を浮かべ、弱々しくかぶりを振りながら上擦った喘声をあげた。
 「ふぁ…っ、あ、も……ッ」
 「イきたい?」
 こくこくと子供のように何度も頷く先生の耳朶を食み、舐め上げる。

 「じゃあ、コントローラーの目盛り、上まで上げて」

 「…え……」
 先生が、潤んだ目を瞬かせた。

 「僕は両手が塞がってるから。自分で上げて」

 平坦に告げた僕の言葉の意味を咀嚼するや、驚愕の表情を浮かべ、できない、と首を横に振る先生に、「でないとずっとこのままだよ」と囁いてやる。
 同時に意地悪くも前後を愛撫する手を止めると、体内にこもったまま渦巻く毒をもった熱に、先生はせつなげに眉根をよせて呻いた。
 無意識にか、僕の手に擦りつけるように腰が揺らめいている。嘲笑し、スイッチを手にしたまま俯き躊躇っている先生の耳元に、くちびるをよせて呟いた。


 「できないなら、いいよ?……先生」


 その短い台詞に、びくんと大仰なほど先生の身体が震えた。
 「……、っ…」
 きつくそのくちびるが噛みしめられる。それが引き金になったかのように、僕の先の命令を実行しようと、緩慢ながらもその身体が動作を始めた。
 その額にゆがめたくちびるを押しつけながら囁く。
 「するよね? 先生」
 「……は、い…」

 顕著に垣間みえる『教育』の成果に、僕は満足した。

 先生が、怯えからか引き攣れるような息をつきながら、微かにふるえている指をコントローラーの目盛りにかける。衝撃に備えるように身体を強張らせると、そのままぎゅっと目をつぶり、親指のはらで摘まんだそれを自ら押し上げた。

 途端、
 内部の玩具が反応し、激しく振動する。

 「や…ッあ!っ、あぁ あ……!」

 低い機械音をたてながら激しくうなり始めた玩具に、先生は悲痛ななき声をあげて僕にすがりついた。急激に下肢を襲った鮮烈な感覚に、緩やかな快楽に惰性していた内壁が戦慄くようにきつく収斂する。
 其れを引き剥がすようにして、びくびくと髪を振り乱して啼く先生の奥深くに指を挿しこむと、振動している異物を押し上げ、つよく前立腺を抉りたてた。

 「ひ、ッ……、───ッ!!」

 声もたてずに息を詰まらせ、先生が達した。
 不規則な痙攣を幾度か繰り返し、先端を包み込むように愛撫していた僕の掌に、どろりと白濁した液を吐き出す。

 絶頂の波が去り、やがてその身体が弛緩するのを待って、
 僕はようやく玩具を止めた。

 「っは、…はぁっ、……っん…ッ」
 未だ呼吸もままならない先生の内部から、ずるりと引きずり出す。

 「そんなに気持ち悦かった? コレ」
 「………!」

 どろどろに粘液で塗れた其れを、見せつけるようにわざと眼前にちらつかせると、それを直視できずに、先生は上気した顔をさらに赤く染め、泣き出しそうな顔を背けた。

 羞恥と屈辱に乱され、いちいち僕の思いどおりの反応を返してくる先生に、
 ぞくぞくと支配欲が満たされていくのを感じる。

 「あ……」
 射精直後で力なく投げ出されたままの脚を抱え、ぐっとその胸につくほど押しあげる。  膝裏をすくい上げてその軽い身体を持ち上げ、背後の壁に背中を圧しつけるようにして其処を支点に完全に下肢を浮かす。
 僕の意図を察知した先生が、狼狽して弱々しく身を捩った。

 「あ…、待っ…、まって、くだ……」
 「力抜いて」

 有無を言わさず、いきり勃った自身の先端を小さないりぐちに当てがう。
 目に見えて肢体を緊張させる先生に構わず、一気にその内部に押し入った。

 「ん、あ あぁ……ッ!」

 玩具とは比べものにならない質量を持ったものに、散々にいたぶられ過敏になった後孔をすぐさま押し開かれ、先生は悲鳴じみた嬌声をあげて大きく仰け反った。
 ひどく収斂を繰り返し、締めつけてくる狭い内道を引き剥がしながら、なんども揺さぶって奥まで穿つと、揺すりたてるたびに先生の喉からは苦しげな呻きが漏れる。

 「っん…、うっ、う……」
 先の愛撫ですっかり濡れていた其処は、さほど苦もなく僕を根元まで飲みこんだ。

 両脚を抱え上げられ、背中と僕の膝についた手のみで体重を支える体勢を強いられている所為で、通常以上につながった部分に負荷がかかり、結合を深くする。
 かつてないほど奥まで僕を受け入れさせられ、先生はぽろぽろと子供のように涙を溢れさせながら「もう無理です」となんどもかぶりを振った。

 慣らすようにぐちゅりと音をたてて抽挿すると、先生の背がびくりと撓む。

 「声、我慢できる?
 あんまり大きい声出して、誰かに気づかれても知らないよ」

 いくら人影がないとはいえ、屋外であまり騒がせるのは賢策ではない。
 わざと羞恥を煽り立てるような物言いをすると、うつむいたまま乱れた息をついていた先生が、抑えられる自信がないのか小さく首を横に振った。

 「仕方ないな。……じゃあホラ、噛んで」
 云いながら先生のシャツをたくし上げ、口もとまで持っていく。促すようにくちびるに押しつけると、先生はふるえる口を開けて、それをぎゅっと噛みしめた。

 「……ん、…」
 「そう。いい子だね」

 云いながら、外気に露わになった朱い突起にぬるりと吸い付く。
 「ん、ッ、うぅー…!」
 軽く甘噛みしつつ腰を揺らめかせると、びくんと先生の体がしなった。その痛みにも似た鋭い感覚に、応えるように内部が淫猥に絡みつき、収縮しては僕を悦ばせる。
 「ふっ……う、…っ」
 シャツに吸収され、くぐもった喘ぎにしかならない声を漏らす先生の、一向に乾かない涙を舐めとり、閉じた目尻にくちびるを落とすと、僕はその脚を抱えなおした。

 「動くよ」

 予告すると殆ど同時に、ぐっと腰を突き上げる。
 「ひッ…、う……んん…!!」
 這い出るようにぎりぎりまで抜き出し、また奥までもぐりこむ動作を幾度か繰り返すと、拒絶とも享受ともつかないやり方で、先生がまた首を横に振った。
 その閉ざされたままの瞳に焦れ、奥を小刻みに揺すりながら囁く。
 「目、開けて。ちゃんと見てよ」
 台詞の意味をひろいあげると、仕方なく先生が目を開いた。数度涙を弾くように瞬きをし、その乱れた黒髪の隙間から、のろのろと視線を自らの下腹部に向ける。
 「……、…っ」
 一瞬、大きく目が見開かれ、先生がまた目をつぶった。

 挿入の衝撃に、一度出しておきながら再び勃ちあがった先生自身と、脚を捉えられ、浮かされた下半身の奥に雄をくわえ込まされている不自然な様。

 浅ましくも不実な快楽を貪ろうとする身体を見ることもできない、飽きもせずに泣き続ける先生の淫らな嬌態に、僕は先生の中でまた一層硬度を増す。
 「んッ…う……、うぅっ…」
 じっとしていてもひくつく内壁に押し包まれ、湧きあがる悦楽を我慢できず、大きく注挿を再開する。熱いものが内部をこすりながら移動するたび粘膜をひきずられ、先生が切れ切れにくぐもった悲鳴をあげた。
 ぐずぐずに溶けきった其処の凝りに当てるようにして強く突き上げると、数回同じ動きを辿らせただけで、過敏な先生の後孔は追い詰められ、びくびくと断続的な痙攣をみせた。

 絶頂が近い。

 「またイきそう?」

 意地悪く状況を言葉にして問うと、先生は、あるいは睨みつけていたのかも知れないが、僕に訴えるような視線を向けながら、力なく首を頷かせた。
 「可愛い、センセイ」
 くちびるで笑みをかたちづくる。余裕があるようにみせながらもその実、僕自身、ともすればすぐにもイかされそうな愉悦の中に居た。
 衝動にまかせ、止めを刺すかのように乱暴に奥まで穿ち、先生の弱いところを幾度も突き上げる。

 「ひ、っぅ、んう──…!!」

 精一杯に押し殺した嬌声をはなって、
 瞬間、先生の先端からまた白濁の液体がこぼれた。

 同時に、僕を深く飲みこんだ後孔がうねるように大きく痙攣する。
 ひときわきつく締めつけられるその感覚に、僕は右目の下に皺を刻んだ。そのまま、性感がやり過ごせない一線を越えたのを感じとる。
 「…っ、……出すよ」
 耳元で囁いた言葉が聞き取れているのかいないのか、反応するように内部がまた締まる。
 先生の射精に半ばつられるようにして、僕もまた先生の最奥に精液を注ぎこんだ。

 放埓の余韻も去らぬまま、おぼつかなくも荒く呼吸しながら、きつくシャツに歯をたてている先生の口からそれを離させる。
 「っふ……、ぁ……」
 ようやく自由になった口で息を吸いこむ先生の開いたくちびるを、そのまま自分のそれで塞ぐ。一瞬、先生の身体は強張ったものの、逃げる舌を攫いつよく吸いたててやると、脱力して、僕に合わせるように舌を自ら絡ませてきた。
 舐めあうような口づけを終え、くちびるを離す。抱え込んでいた脚をおろしてやると、先生は糸が切れた人形のように、ずるずると壁伝いにその体躯を崩れさせた。

 「………ん……」

 目を閉じたまま細く喉を鳴らす先生の肩口に顔をうずめると、
 僕もまた同じように瞼を閉じた。






 五時間目も終わろうというこの時間帯、こうして人目を忍んで僕らが抱き合うことは、別に珍しいことではなかった。
 最初は僕が授業をさぼることにいちいち難癖をつけていた先生だったが、何度も身体を繋げられるうちに、逆らう術を失くしてやがては黙った。

 どこで、どう先生を扱い、どう抱こうと僕の自由。
 先生には、それを受け入れることしか教えていない。




 「……、ふ…」

 ずるりと萎えた自身を抜き出すと、息をつめていた先生の身体が弛緩した。
 その呼吸が落ち着くのを待って、ゆっくりと身体をはなす。
 少し位置が移動し、角度の変わった太陽のひかりが眩しかったが、時折吹き抜ける微風が汗で湿った肌に心地良い。
 解放した途端、先生は身を捩って僕の腕から抜け出した。
 先に脱ぎすてた着衣を重そうな動作で引き寄せる。
 その肩に腕を擦り寄せて「もう行くの?」と声をかけると、先生がのろのろとだるそうな視線をこちらに寄越した。

 「こんなところ……誰かに見つかったら、拙いですから…」

 さっきまでこの腕の中であんなにも淫らがましい痴態をみせていた恋人は、身体を離したとたん、すぐにまた教育者の顔にもどる。
 いつだってそれが、僕には悔しかった。


 脱ぎ去った衣服を着込もうとする先生を、やんわりと差し止める。

 「夜神くん……?」
 怪訝そうな顔つきで僕を見上げてくる先生の膝に手を掛け、先と同じように大きく左右に割りひらく。情交を終えたばかりの其処は、口を閉じきらないまま赤く熟れた内壁をのぞかせていて、おさまりきらず体内から溢れ出た僕の白い放恣がからまり、えもいわれぬ淫靡さをはらんでいた。

 「じっとしてて」
 「………!!」

 後孔にのばした僕の手に握られているものに気づいた先生が、こぼれんばかりに目を見開いて、激しく身を捩り始めた。

 さっきまで散々先生の内部をいたぶり続けていた、玩具。

 「や……嫌ですッ…も……いや…っ」
 「暴れないの」
 疲弊していて力の上手くこもっていない抵抗を難なくかいくぐると、僕は其れをいまだ濡れたままのいりぐちに押しあてた。
 先生は拒むように身体を強張らせたが、そのままほんのすこし指先に力を込めて押しやるだけで、浅ましくひくつく其処は引きこむように簡単に異物を飲み込む。
 「ひ、っ……いや…ぁっ…」
 「大丈夫、スイッチは入れないから」
 届ける限り奥に押しこみ、指を引き抜く。どろりとした粘液が口から糸をひいた。
 再び体内に戻された異物に、引き攣れた呼吸を繰り返す先生の髪をなで、怯える頬にそっとくちづけてやる。

 「中から僕のが出てきたら困るでしょ。
 ……ちゃんと塞いでおかないと。ね」

 やさしく嗤いかけながら耳元で睦いだ台詞に、先生は潤みきった双眸に絶望にも似た色をうかべた。その黒淵の瞳に、微笑んだ僕が映りこむ。
 ぞくりと、痺れるような感覚が背筋から頭頂を走り抜けた。
 ああ、そんな目をするから。


 いつからだろう。
 僕の可愛い大切な先生に、こんな暗い嗜虐心が芽生えたのは。
 やさしくやさしく愛してあげたいのに、いつだって先生のそんな風に怯えた目を見ると、もう我慢なんて出来ない。苛めて、泣かせて、目茶苦茶にしてやりたくなる。


 「好きだよ。先生。……ゴメンね」
 囁きながら濡れた瞼にくちづける。


 でも、先生がいけないんだよ。

 そんな目をして僕を見るから。



 遠くで鐘の音が聞こえる。
 再び点いた埋火に、僕は先生のくちびるを塞いだ。




end.





おつです。
ウラ高校教師、如何でしたでしょうか。
え?あんまりオモテのと変わり映えしないって?そりゃそうでしょうよ(ちょっと!)

そもそもこのSS、先日開いた絵茶でちゃみさんからいただいたリクエスト・
「青姦で道具で竜崎先生・18禁風味」
を基に起こしたシロモノなわけですが、 青姦と道具という倒錯チックな二重プレイに、うまい文章が浮かばずさんざアタマを悩ませた挙句に書き上げたひじょうに難産の一本でございました。
18禁というわりに、若干エロスが不足しているような気もします。
むしろオモテのSSの方がエロスな気までしてきます。
ホントはもうちょっと酷くしようと思ってはいたんです。●●を●●たまま●●するとか(←分かった方、スゴイです)
でも例え月くんが出来ようとも、ワタシには出来ませんでした OTL センセーがかわいそうだから!

いちおう18禁でということでしたので、R18部屋行きにしました。
ていうかこのSSのために建設したんですけどネ★

よろしければ感想などお聞かせくださると幸いです!

それでは、最後まで読んでくださり、アリガトウございました〜v



update---2005.5.26