なぜかLL・エロ注意。












溺愛





 闇が落ちてくる。


 さらさらと、粉のように砕かれた真っ黒な闇の粒子が、高い天井から絶え間なく降りそそいで、すべてのものを覆い隠していく。
 私はそれをただ、仰ぎ見ている。
 黒い雪が積もり積もってゆくさまを。床にも、真っ白なシーツの上にも、そしてその上に横たわっているはずの、私の肢体にも。
 そしてそのまま散り続けた闇は、私を完全に覆い、何も出来ず、ただ埋もれてゆくままに、呼吸すら塞がれて


 そのまま、死んでしまうのだ。









 「どうした。ぼんやりして」

 耳慣れているはずのこの声も、こうも長い間離れていたのでは、どこか不思議な違和感と新鮮さを帯びて聞こえる。
 すこしだけ掠れた、適度に低い男の声。

 「なんでもありません。…ちょっと事件のことを、考えていただけです」

 「それは随分ご挨拶だな。久方ぶりに逢った兄との時間より、その事件の方が大切なのか?」

 「ふふ、そういうわけでは……、あ」

 上に圧し掛かったままの逞しい兄の身体が、おもむろに位置を変えたかと思うと、そのまま両足を捉えられる。散々にひらかれたばかりで力の入らない肢体は兄の手に、簡単にいいように扱われた。
 ぐっと膝を押し上げ、あられもない場所を露わにさせられる。

 さっきまで男を受け入れ続けていた、ほそく小さないりぐち。

 「も、もう…駄目ですエル、…これ以上は…」

 狼狽えながら制止し、身を捩っても、兄は抱え込んだ腰を下ろそうとはしてくれない。
 むしろもっと奥まったところまでよく見えるように、肉を左右にわりひらき、顔を寄せてくる。その刺激で、とろりと、いりぐちからなにかが伝う感触がした。

 兄が中で出した、精液か。

 羞恥に顔が赤くなるのが見なくてもわかる。
 一番、慎み隠すべきはしたないその場所を、兄の目にさらしているのだ。

 「ぁ……ん!!」

 ちろ、と、微細な刺激が、秘部をはしった。

 「あッ…、エル、おねがいですから…っ……も、やめ…」

 ぴちゃぴちゃと立つ水音と、其処に熱い吐息がふれたことで、舌で愛撫し始めたことを悟る。すこし視線を下に向ければ、自分の内股に顔を埋める兄が目に入るだろう。そう思えばこわくて目を動かせず、そのままかたく閉じる他ない。
 自分に愛撫を施す兄の姿というものは、いつまでたっても慣れない、見てはいけない禁忌のような印象が拭いきれなかった。

 「ひ…、んッ…、……!」

 つぷり、と濡れた肉を押し分けて、長い指が挿入される。
 それを意識するより先に襞が収斂してしまうのは、むかしからこうやって散々に嬲られてきた成果なのか、それともこうされることを本能が悦んでいるのか、どちらなのだろう。
 喉をふさぐように息をつめ、精一杯に喘ぎを殺して、兄の節くれた指が的確になかをこすりあげる仕草に耐える。それでもこらえられない部分を弄られれば、電流が走ったかのように勝手に腰がはねた。
 ぐち、ぐち、とぬるついた粘膜のこすれあう音を立てながら、奥までもぐりこんだ指がまるで中のものを掻きだすような動きで刺激してくる。事実、兄の指と後口の隙間から、注挿されるたびにまざりあった粘液があふれだして伝い、シーツを汚しているのが見ずともわかった。

 「声を出してもいいんだよ。どうせ誰もいないんだから、かまいやしない」

 やさしく囁かれても、かみ締めたくちびるをほどくことはできない。
 快楽に負け、あがる自分の嬌声は嫌いだった。
 兄のように低い、大人の男の声とは程遠いこの声。かみ殺しても思わず漏れる艶をおびた喘ぎは、まるで自分がおんなになったかのようで、ただおぞましい思いがした。

 「ぅく…っ、……んん…!」

 かたくなな私を窘めるかのように、指が二本に増やされる。ぐっと一度二度、奥まで突かれたかと思うと、浅い位置まで抜かれそのまま指をひらかれた。
 粘着質な音を立てて、すっかり軟らかくなっているいりぐちの襞が口をあける。

 「ぃや…ッ」

 「中が、真っ赤に腫れ上がってるね。…久しぶりで、無理をさせてしまったかな」

 労わるような声で呟くと、開かれたままの其処の浅いところに再び兄の舌が触れる。
 堪らず悲鳴のような喘声をあげると、応えるように生暖かい舌がぬらぬらと蠢きだした。
 指で大きくひらかされ固定されたままで、異物を押し出すことも締めつけることも出来ずに、恥知らずな動きをくりかえす内壁を兄の目にさらしながら愛撫を受け入れる。

 恐ろしいばかりの快楽と恥辱。
 それが禁忌であると、背徳であると感じながらそれでも兄の手管にさからえはしない。

 涙まじりに嗚咽し始める私の嬌態に満足したのか、兄は舌と指を引いた。

 「出しなさい」

 薄いくちびるを綻ばせ、命令してくる兄の命ずるままに私は限界まで昂ぶった自身に手をかけ、数度こすりたてると自らの手のひらの中に射精した。

 「いい子だ」

 そう云って、髪を撫でてくる兄の手は、むかしと変わらず暖かい。
 おぼろげな記憶の中にある、遠い昔。
 はじめて逢ったときから、そうだった。