エロ注意です。 ドライ 「こういう方法でなにか解るわけ?……竜崎は」 「なにがです」 「僕と寝ることでキラかどうか解るわけって聞いてんの」 つまらなそうに自分を見据える男に、いつも通りの表情を崩さず視線を合わせる。 捜査本部であるこの部屋のレストルーム。 後ろは白い壁、左右は長い腕の檻、そして目の前には均整のとれた容貌の微笑。 竜崎はこれからはじまるであろう行為をぼんやりと想定しながら、わずかな苛立ちをもって顔をわずかに上向かせた。 「……どういう意味ですか」 そう切り返すと、相手もいつも通りの作られたやさしげな微笑をうかべて言葉をつなげた。 「竜崎が僕に対して起こすアクションなんてすべてが「キラか」「キラでないか」を判断するための行動だろ?……それならコレも捜査の一環ってヤツなのかと思って」 「ばかばかしい」 竜崎が吐き捨てるように呟く。 わざとらしい。 自然なはずのその笑顔も、本性を知る人間にしてみれば白々しさだけが際立ってみえる。 「そうか?そうでもないと竜崎が僕に大人しく抱かれてる理由が無い」 「いちいち理由がを明らかにしないと動けませんか?夜神くんは」 侮蔑するように抑揚もなく応えをかえす竜崎の首筋に、月の掌が触れた。 「そういう話じゃない。純粋な興味だよ。いつも無感動で潔癖で、セックスなんてこればかりの興味もありませんって顔してる竜崎が、僕とふたりっきりのときにはあんな別人みたいなやらしい姿をさらしてみせるのは何故なのかって」 竜崎の黒い双眸が、無感情に月を射抜いた。 「……夜神くんだからっていうのは自惚れかも知れませんよ。単にセックスが好きなだけで、相手なんて誰でも良いのかもしれません」 論点をずらした返答に月がわずかに目を細める。 故意にではない。 単に自分にも適切な答えが見つからなかっただけだ。 最初に夜神 月といわゆる性的な関係というものを持ったのはいつで、何が切っ掛けだったかなどということはもう既にはっきりとは記憶にない。 それから幾度となくそういう行為に及ぶことは多々あったが、それにしたってどうして自分がそれを拒まず受け入れているのかという理由すらわからないような有様なのだから、何故、などと問われても返す言葉は見つかるわけもない。 「誰でもイイから咥えこみたいだけ?だとしたらただの淫乱だね。竜崎は。見かけによらず」 「私が淫乱なら、それにかこつけてこうやって私を抱いてる夜神くんは何なんです」 「言うね」 愉しそうに喉の奥で嗤う月の貌が、きれいな笑みのかたちに歪んだ。 「まあなんにしたってどうせやるなら楽しい方がいいに決まってる。竜崎だって、そうだろ?」 言葉の抑揚にあわせるように、月の掌が竜崎の着ていたシャツを捲りあげるようにして音もなく素肌の上を這いのぼっていく。 「………、っ」 竜崎の息がしずかにつまった。 たどり着いた指が小さな赤い突起を乱暴なほどに抓み、指で捏ねる。 従順に反応をかえし、いっそう赤みを増した其処を指で弄びつつぬるりと舌を這わせると、竜崎の口からはやくも熱を帯びはじめた戸息がこぼれ出た。 かるく甘噛みするように、歯を立て嬲る。 その鋭い刺激にかすかにふるえたその細い喉から、搾るような声がちいさく漏れる。 竜崎は一旦火がつけば早い。 あとはなし崩しのように快感を求めてこの手の中に落ちてくる。 少なくとも、竜崎の身体は。 「…あ……っ」 そのまま執拗に其処への愛撫を続けると、抱き込むように密着した箇所から竜崎自身が熱を持ちはじめたのがはっきり感じ取れた。 だらりと壁につたって投げ出されていた竜崎の手が、掴まるものを求めてうろうろとさ迷う。 逡巡したあと、すこし遠慮がちに肩口のシャツをつかんだその手を、月は愛撫を止めずに視線だけを動かして一瞥した。 「手、空いてるなら自分で脱いでよ。下」 素っ気無い月の言いように僅かに眉を顰めながらも、それでも抗うことはせず、素直に竜崎はジーンズのボタンに手をかけた。 下着ごと膝のあたりまでおろすと、あとは器用に足を使って脱ぐ。 足首にまとわりついているくしゃくしゃに丸まったそれを、無造作に爪先で床の上に蹴り出した。 その動作が済んだところで、月が腰をさらに屈めて竜崎の下肢へと手をかけた。 すでにゆるく勃ちあがりつつあった性器を手のひらで絡めとると、そのまま口内に飲み込む。 「んッ……、っ」 唐突にぬめった粘膜に包みこまれ、竜崎の腰がはねあがる。 口の中でぐんと硬度を増したそれを舌を押し当てながら唇で扱くと、竜崎が鼻から抜ける甘い声で呻いた。 こぼれてくるわずかに苦い液と、溢れてくる唾液を嚥下せずに舌に絡ませて、わざとじゅるじゅると卑猥な水音を立てて口淫する。 その音は否が応にも竜崎の耳に届き、羞恥と劣情をひとしくたきつけ身体を逆上せさせる。 こういう情事の最中、癖のように目を閉じる竜崎ならばなおさら音には敏感だ。 「ん、ん……、あッ…」 舌先で敏感な先端をからかう。 ひくつく割目の穴をこじるようにつつくと、もう立っていられないのか白い脚ががくがくと震え始めた。 「ああ、あ…っ、…」 月の頭を抱え込むように身体を丸めて、竜崎が高くひずまった喘声をあげる。 月は根元まで飲み込んでいた茎を唾液をこぼさないよう吸い上げるようにしてすすると、そのままちゅぷりと唇から抜き出した。 腰を壁に押しつけるようにして支えていた手を離せば、竜崎の身体はずるずるとくず折れるようにして壁伝いにへたりこんだ。 「後ろにも欲しいんだろ。足、ひらけよ」 頬を紅潮させて荒まった息をついている竜崎の顔を覗きこみながら、膝に手をかける。 「………………」 割り開こうとするでもなく乗せられたままの手に、竜崎に自分で開かせようという意地の悪い月の意図があらわされている。 それでも竜崎は視線をわずかに泳がせただけで、目を閉じると自ら大きく足を左右に開いた。 なまめかしく白い内股の奥まった場所に見て取れる、かたく結ばれたままの入り口。 脚に手をかけたまま、其処を覗き込むように月が顔を近づけると、立てさせられた竜崎の膝がひくりと内側に捩れた。 「…………っ」 股の奥にのばされた月の手が襞の周りをぐるりと撫でたあと、確かめるように指のはらで其処を圧迫してくる。 たったそれだけの行為でも、後孔での快楽を覚えこんでしまった竜崎の身体は、触れられれば飲みこみたいと疼くように浅ましく入り口をひくつかせる。 「欲しい?」 わかっているはずなのに、わざとらしく月が問いかけてくる。 にやにやときれいな顔を不実に歪めてみせる月の、常ならば苛立ちを覚えるようなその態度も、淫慾に満ちた空気を呼吸すれば色情を煽る因子のひとつに過ぎない。 請われるまま、竜崎は素直に首を縦に頷かせた。 「……ほしい、です」 はやく、とくちびるの動きだけでその先の行為をねだってみせる。 打算し計算しつくされたうえの行動なのか、それとも無意識のうえなのか、貪欲なほどに更なる享楽を求めはじめる竜崎のその仕草は、此方の慾情を煽るぞくりとくるような淫靡さをはらんでいた。 「……………」 望むとおりに其処を押し開くことなく、ふいに月の指が後口からはなされる。 怪訝そうな顔つきで月を見上げる竜崎の手をとると、そのまま自らの口もとに運び、その甲から伸びた長く細い指に舌を這わせはじめた。 「夜神くん……?」 戸惑うような声を出す竜崎に構わず、中指と人差し指を口内に取りこみ、唾液を絡ませてしゃぶる。 ひと通り指の付け根まで濡らすと、ぬるりとくちびるから吐き出した。 「はい、いいよ」 「え……?」 「自分でしてみせて」 そう言って笑む月に、竜崎はようやくその意図を知る。 自分の指でひらけと云うのだ。其処を。 さすがの竜崎も狼狽して顔をうつむかせた。 自分で後口をあつかったことは、一度もない。 いつもならば月が指や舌で割りほぐしてくれていたし、自慰のときですら其方にはふれることはなく、触れようとも思わなかった。 受け入れることに慣れているとはいえ、自分自身の指となるとまた別の恐怖心がある。 窺うように月の顔を見ると、その竜崎の動揺を愉しむかのように、笑みをうかべたままの月が掌で内股を撫で上げてきた。 「どうしたの。欲しいんでしょ。それとも、自分じゃできない?」 心情からというよりは明らかに揶揄する響きをもったその台詞に、竜崎は不快をかくそうともせずにぐっと眉をしかめる。 こういうときでも負けず嫌いの本分が顔を覗かせるのか、半ば自棄に顔を下向かせ背中をまるめると、股の奥に指をのばした。 「………、…」 いつも月の指が自分にするように、濡れた指先で入り口を慣らすように撫でて湿らせる。 いくらか躊躇ったあとそのままぎゅっと目をつぶり、僅かにちからをこめて内部に指を侵入させた。 「う、……っ…」 自らの内壁に包まれるその指の感触に泣きたくなる衝動を堪えて、なんとか届ける限り奥まで押しこむ。 異物の侵入にひくりと収縮する粘膜が落ち着くのを待ち、指に馴染んできたのを見計らってから、ゆるゆると緩慢に抜き差しをはじめる。 「ん……ん、……」 常に月の指がどう此処を弄んでいたかを頭に思い浮かべながら、その記憶を追うようにたどってぎこちなくも指を動かした。 「そろそろ指、増やせるんじゃない?」 竜崎がするがままにその行為を傍観していた月が横から口をはさんでくる。 生理的な涙で潤んだ目を開いて、竜崎がにらむように目の前の月の微笑を一瞥した。 「……っ、黙ってて、ください」 つよがった台詞を吐きながらも、云われたとおりに中指に添えて人差し指も入り口の狭い襞をくぐらせる。 痛みは少ないが、其処が更に押し拡げられたことで下腹部にたまる圧迫感が増す。 「うぅ……っ…」 ぐっと奥歯を噛み締めながらも、なんとか其処を柔らげようと二本の指で内壁をたどった。 指を動かすたび、ぐちぐちとぬめった肉の擦れる音が響く。 自分でしていることとは云え、内部を直接刺激すれば慣れた身体は嫌でも反応し、快楽の芽を摘みはじめる。 「はぁ、……っ」 ぞくぞくと背筋を這いのぼる見知った感覚に、竜崎はぶるりと身震いした。 じき、指だけでは足りなくなる。 「ちゃんと気持ちイイところににあたるようにしてる?」 言うなり、月の手が後孔をいたぶる竜崎の手を捉える。 まるで子供に手取り教えてやるような仕草で、上から手を動かして指の角度を変えさせる。 「あ! あッ……」 途端、高い声を放った竜崎の背が、びくりと弓なりに反りかえる。 「ホラ、さっきのところじゃない。ココだろ?竜崎が好きなのは」 そのまま何度か指を往復させてやると、そのたび竜崎の身体が嬌声とともにひくつくように震えた。 「ああほら、休んでないでちゃんと自分でして」 月の手が竜崎から離れ、またもとの傍観の姿勢にもどる。 すでにそこの粘膜は溶けきって、容易く竜崎自身の指を飲み込んでいる。 もっと太い楔がほしいと月を求めて収縮を繰り返している其処に気づいていながら、月はなおも竜崎に自らを追い込むよう促した。 「ふぁ…っ……あ…」 まだ許されないことをその月の様子から悟ると、竜崎は涙を滲ませながら先に教えこまれたその場所を自ら責め立てた。 前立腺のあたりに指のはらがこすれるたび、下肢からせりあがってくるような大きな快感の波が、触れてもいない性器の先端に先走りの露を結ばせる。 ともすれば自らの指だけで達してしまいそうなほど高まった性感に、竜崎が眉をたわませてせつなくないた。 「も、無理、です……夜神く…」 「入れてほしい?」 月の問いかけに、余裕もなにもなく竜崎の首が何度も頷く。 切羽詰ったその様に、月の唇が若干の愛しさをこめて吊り上げられる。 「いいよ……指、抜いて」 竜崎はふるえる唇でつめていた息を吐き出すと、また呼吸を止め、一拍おいてずるりと内部から指を抜き出した。 月の手が左右に拡げられていた脚を捉え、その細い足首を掴んで大きく抱え上げる。 赤く熟れた後孔に指とは異なる熱い塊が触れるのを感じ、竜崎は無意識に目を閉じて衝撃に備えて力を抜いた。 「あ、あぁ……っ」 ぐーっと内壁を押し開くようにして、指とは比べ物にならない質量のものが体内に入りこんでくる。 待ち望んでいたものに歓喜するかのように、意思とは関わりなく不規則に収斂する後孔の鮮烈な感覚に、竜崎は首を振り乱して悦楽に耐えた。 月の両手が反射的に逃げようとする細腰を掴み、なんども揺すって届ける限り奥まで犯す。 びくん、びくんと律動を繰り返す竜崎の耳もとに、快楽を隠しえない息を吹きかけながら囁く。 「ねえ、こういうセックスはLの推理ではキラっぽいわけ?」 唐突に放たれた先に途切れた話の質問に、聞こえているのかいないのかわからないような仕草で竜崎が身を捩らせる。 その薄い身体をさらに壁に圧しつけて、わずかなすき間も残さないほど密着する。 鼻先が触れ合うほど顔を近づければ、竜崎が居心地悪そうに視線を落とし喉を鳴らした。 「そんなに気持ち悦さそうにしてても、頭の中では逐一僕の行動をキラかどうか判断してるんだろ。なんとか言えよ、竜崎。それとも、本当にLはただの淫乱?」 答えを諭すように腰をわずかに揺すりたてながら囁くと、ちいさく艶めいた声をもらしながらも、竜崎の潤んだ双眸が月をみつめた。 なんどか目を瞬かせ、その唾液で赤くぬかるんだくちびるをひらく。 「……いまは、そんなこと…どうだっていいです。淫乱だって結構ですから、……はやく」 ください、と掠れた語尾に甘やかな響きをはらませ、竜崎が細い腕をしならせて月の首に巻きつける。 ねだるように月の腰に擦りあわせられる開かれた脚を抱えなおすと、月は侮蔑とも自傷ともとれるような苦い笑みを浮かべた。 「演技だとしたら、大したもんだよ。……竜崎」 どんなに抱いても、どんな抱き方をしても、容易く竜崎の身体はねじ伏せられてもこればかりだって竜崎は手には入らない。 矛盾している。 馬鹿らしい。 そのまま腰を突き上げると、半ば乱暴に竜崎のなかを穿ちはじめた。 びくんと竜崎の背がたわみ、仰け反った白い喉が露になる。 「ひ、っ……だめ、ですっ…、もっと、やさし…く…」 髪を振り乱してつよい刺激に身悶える竜崎の懇願を無視し、いっそうちからをこめてその細い体躯を突き上げ責め立てると、悲鳴じみた嬌声をはなって竜崎がシャツ越しの月の背中に爪をたてた。 そのまま右手を腰からはなすと、痛いほどに限界まで張り詰めて揺られている竜崎の性器を掴んで扱きあげる。 「やぁ…っ、あ、あ、あぁ……っ!」 数度扱き、突き上げた途端、既にぎりぎりまで昂っていた竜崎は全身を震わせてあっけなく吐精した。 白い淫の飛沫がその胸や腹を汚す。 絶頂の余韻にびくびくと身体を戦慄かせる竜崎を休ませることなく、月はすぐにまた自らの解放を目指してその内道をこすりたてた。 「ひぁ……っ、…っ」 ひどく収斂を繰り返す其処に引きずられて達してしまいそうになるのを堪え、嬲るかのようにはげしく抽挿すると、身も世もなくあられもない声をあげ続ける竜崎の、固く閉じた目から透明な雫が滴りはじめた。 「……馬鹿みたいだ」 そう呟いて竜崎の頬に跡つく涙を舐めとった月の言葉は、竜崎の耳には届かなかった。 |