「大丈夫? 先生」 校舎の外は、既に薄い宵闇の中だった。 離棟の東側にある職員用の駐車場へ続くスロープには、人の影はまったくない。 「ちょっと休みましたから…平気です」 そう云って鈍く微笑む先生の足取りは、言葉とは裏腹にかなり危なっかしい。 ふらふらとだるそうに歩く先生の顔を、軽く覗きこむようにして云う。 「そんなんで運転するの?今日は電車にしたら?」 「運転は得意ですから、だいじょうぶですよ」 ほんとかよ。 訝しげな視線を送りつつスロープを渡ると、駐車場には既に三・四台の車が残っているだけで、がらんとしていた。 そのうちの一台の前で足を止めると、キーをポケットから取り出しながら、先生がふう、と大きくため息をつく。 やっぱり相当具合が悪いんじゃないか。 「熱、出てるんじゃないの?先生。顔赤いし…」 云いながらその額に触れようと手を伸ばすと、先生の身体がびくっと大仰に仰け反った。 同時に慌てた声が制止してくる。 「や、夜神くん!」 「…………これもアウト?」 「……アウトです」 「ええー……」 僕が渋るように苦そうな声を出すと、先生が窘めるような目で僕を見上げる。 大きく息を吐いたあと、僕は半眼で先生を見やった。 「……わかってますよ。『他の人間に先生との関係は秘密。学校内や外では先生には触らない・恋人としての発言もしない』でしょ」 「はい」 僕は別にばれても構わないけど。 先生と僕では立場も責任の重さも違うということなのだろう。 先生が望むなら、誰にだって完璧に隠匿してあげる。 まあ、好きなだけ先生に触れないのはツライけど。 「いいよ。そのぶんふたりっきりの時に触るから」 「!!」 途端、先生の顔が真赤になる。 ホントにいちいち僕の云うことに顕著に反応して。 くく、と笑いを喉でかみ殺していると、その僕の態度に先生がさも機嫌を損ねたようなかのように、拗ねた表情をしてみせる。 そういう顔もたまらない。 「まぁいいや。それじゃあね、先生。また明日」 「あ…、夜神くん」 明朗にそう告げて踵を返そうとすると、先生の声が僕をよびとめた。 「ん?」 「よかったら、送…りましょうか? もう、遅いですし……と、通り道ですから、ついでですし」 そう呟いて、先生は顔をわずかにうつむかせた。あたりが暗い所為で、この距離ではこと細かな表情までは見えない。 落ち着きなくしきりに手の中のキーを弄んでいる先生に、僕はふと口もとを緩め微笑むと、答えをかえした。 「そう? じゃあお願いしようかな」 「…………」 すこしだけ顔を上げた先生が、微か嬉しそうに微笑む。 このお誘いが教師の職務の範疇なのか、恋人同士の逢瀬の延長なのか、訊いてみたい気もしたが、いい方に考えることにして口に出すのはやめた。 車体の反対側に廻り、助手席に乗りこむ。 車の中は私物らしい私物もなく整然としていて、こんなところまで先生らしいとぼんやり思った。 「ちゃんとシートベルトしてくださいね」 云いながらキーを差し込みエンジンをかける先生の仕草は手馴れていて、すこし普段より大人びてみえる。やっぱり先生は六歳年上で、社会人の大人なんだと改めて実感すると、なんだかどこかくすぐったくて複雑だ。 その横顔に、冗談まじりな声をかける。 「僕が運転しようか? 辛いでしょ。先生」 「まだ死にたくないですよ」 困ったように眉根をよせて苦笑してみせる先生は、やっぱり可愛い。 六歳年上で先生で大人。 それでも先生は僕の恋人なんだ。 「ねえ、先生」 「え?」 僕は横目でバックミラーを確認した。 広い駐車場内は見える限り人の気配はまったくない。 運転席のシートに手をつき、身体を乗りだす。 「遠回りして、帰ろっか」 おつです。 セカンド編、如何でしたでしょうか。 ホント疲れました…ようやくってかんじでした… まったくの思いつきで書き始めるのはよくないですね。最初のupした時点では話が3までしかできてなかったんで、その後どうつなげるのかスンゴイなやみました(爆…) 例の如くラストも落ちてナイ… OTL 何がセカンドっつたら勿論セカンドヴァージンなわけですがv はじめても萌ェますが、二回目というのもひじょうに萌ェです! つまりたんに二回目が書きたかっただけのハナシだったんです… それはエロが異常に長いことからも容易に推測していただけることとおもいます。 すいませんでした… OTL 最後までご覧くださりアリガトウございました! よろしければ感想などお聞かせくださると幸いです… つぎはなに書こうかな〜 update---2005.7.9 |