ATTENTION!
ちょっぴり異物がマニアックです(*ノノ)
一応注意しておきます




どんと恋な方はどうぞ!



















200mmHg





 「膣圧計…というんですが、ご存知ありませんか」


 あまりの事態に気が遠くなる、とはこのことだ。

 ボー然となんらリアクションもとれずに呆けている俺を、古泉は相変わらずの鉄壁スマイルで以って見下ろしている。
 その手に握られているものの用途など、俺が知っていようはずもない。古泉が口にした名称を聞く限りでは、通常健全たる男子高校生なら知らないのが普通だろう。百歩譲って知っていたとしても、それを購入してみようとか、あまつさえ恋人に試してみようとする人間はよっぽどの重症だ。その重症患者が今現在俺の目の前にいるわけだが。


 「大丈夫ですよ。歴とした医療器具ですから」


 何が大丈夫なのかまったくもって意味がわからん!


 思考を拒否する大脳を叩き起こして、必死に事態の回避術を模索している俺を尻目に、古泉がニコニコとベッドに片膝を乗り上げてくる。かたや俺はというと、古泉によってブレザーを脱がされズボンを剥ぎ取られ、申し訳程度のカッターシャツ一枚という情けない格好でベッドの上にいる。古泉みたいなガチな変態を前にこんな状況、どうぞお召し上がり下さいといわんばかりだ。
 寝室のドアはきっちりと閉められているし、隙をついたとしても古泉をすり抜けてたどり着くのは難しい。たどり着いたとしてもどっちにしろこの格好じゃ外には逃げ出せない。それ以前に、こういう時の古泉に、隙など一分もあろうはずがない。

 「ひっ…」

 シーツの上にごろりと置かれた古泉曰く医療器具を直視してしまい、その異様な風体に思わず上擦った声とともに息を飲む。もがくようにして後ずさってみたところで、すぐに背中がベッドボードに接触してそれ以上逃げられない。
 そんなことはわかりきっているが、だからといってこれから身に降りかかる災難を予想できておきながら諦観できるほど俺は人生投げてるわけでもない。
 だって終わるだろ、こんなの使われたら。男として。

 「まあ、検査かなにかだと思って下されば。ちょっとした知的好奇心という奴ですね」

 罷り間違った使用方法で何が検査だ!
 完全に怯えきった反応しか出来ない俺に、古泉はさもいとおしいものを見るような目で俺を見据えながらローションのキャップを捻った。


 「痛くなんてしませんよ。ちょっと目を閉じてていただければ、
  すぐに済みますので」


 どこかで聞いた台詞だと思えば、確か初めて入れた時にもお前
 同じ笑顔で同じこと言ったよな。

















 「ふっ、…ぅ、……んん!!」

 知り尽くした動きでわざとらしく前立腺を掠められ、びくっと身体がはねる。
 どんなにそれが嫌でも屈辱で死ねそうでも、身体は正直というやつだ。触られれば反応してしまう。
 そろそろいいですかね、ととぼけた声で呟きながら、古泉がゆっくりと長い指を引きずり出す。くちゅ、とローションで湿った粘膜の音が、卑猥すぎて泣きそうだ。
 おそるおそる古泉に目を向けると、器具の先端部分に塗すようにローションを塗布しているところが視界に入った。見るんじゃなかった。
 俺の視線を受けて、古泉が悪戯っぽく笑う。

 「これ、どうやって使うのかご存知ですか」

 だから知らねえって言ってるだろ。

 「これを使用して骨盤底筋群を鍛えることによって、膣の萎縮や性交痛の改善などに役立つそうですが…まあ、平たく言うと締まりを良くする効果がある訳です」

 洗剤のCMにでも出てきそうな爽やかな微笑で締まりがどうとか言うのはやめてくれ。聞いているほうが恥ずかしい。

 スティック状の形体を見る限りでは、これまでに何度が奴が持ち出してきた玩具に類似したものがあるが、明らかに違っているのは、ローターやらの類についているスイッチの代わりに、本体から繋がった細長い管にゴム球のようなものがついていることだ。
 ローションを塗った部分を中に突っ込まれることは間違いないだろうが、そうした後一体どうやって使うのか、皆目検討もつかない。だからこそ怖い。

 「勿論そちらが目的ではありませんがね。あなたの場合、締まりが良すぎることこそあれ、緩いということはあり得ませんから」

 だから笑顔でそういうことを言うのはやめろっつの!

 古泉の手が膝にかかって、否が応にも身体が緊張する。小学校の時の予防接種前の気分だ。逃げられるものなら逃げたい。でも逃げられない。アルコールで腕を消毒されて、あとは針を刺されるまで終わらない、あの状況とそっくりだ。


 「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。僕のよりずっと細いじゃないですか」


 およそテンプレートな台詞とともに冷たい感触がとても人様には言えない場所にきて、俺は反射的にぐっと目を閉じた。


















 ぐうっと内臓を押し上げて、無機質な感触が体内に入ってくる。
 痛いとか苦しいとか以前の生理的嫌悪感。何度やったって慣れない。
 古泉のじゃないと嫌、などという薄ら寒い台詞は口を裂かれようと言いたくはないが、こういう器具を突っ込まれるよりは体温があるほうがずっとましだと言わざるを得まい。

 「ん、……っ」

 奥まで飲み込まされたあと、慣らすように小刻みに抜き差しされる。確かに古泉のアレが入ってくるときよりはよっぽど衝撃は少ない。代わりに精神的ダメージは計り知れないものがあるが。

 「も、…気が済んだら……さっさと抜けよ」

 またひとつなにか男として、大事なものを喪失してしまった気がする。
 仮にも膣と名のつく器具をだ。こんなところに突っ込まれる方の嫌悪感とか屈辱感とか、そういう精神的疲弊を少しぐらいは考慮してくれてバチはあたらんのではないだろうか。
 ぐったりと息を吐きながら唸ると、


 「何仰っているんです。これからじゃないですか」


 と、これまた水を得た魚という喩えがぴったりくるような表情の古泉と目が合う。
 すさまじく嫌な予感しかしないんだが。

 「膣圧計、と読んで字の如く、胎内の圧力を測るのが目的のひとつですからね。勿論これからそれを計らせていただくわけなんですが」

 どうやって計るかわかります?と聞いてくる奴の顔で、それが奴にとっては愉しくて、俺にとってはろくでもない方法であることだけは容易に予想がつく。そしてこういう時、大体の場合において奴が俺が想定した最悪の予想のさらに斜め上をいくことも、ここ最近においては残念ながら学習してきている。

 「まあ…百聞は一見に如かず、ですかね」

 ふ、と息だけで笑った古泉が、徐に、器具から延びている黒い管のゴム球部分を手にとってみせる。
 何をされるかわからない恐怖で目を逸らせずにいる俺を端目に、古泉は愉しそうな笑顔を1ミクロンも崩さないままそれを掌で押した。


 「ひ……っ …!!?」


 びくっと身体が硬直して、悲鳴にすらなりそこなった掠れた音が喉から抜ける。突然襲ってきた未知の感覚に、俺は目を見開いてシーツに爪を立てた。
 なんでかって?そりゃ誰だって驚くだろうよ。

 中に入ってる異物が、急に膨張しだしたら。





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これから圧をかけていきます(`・ω・´)+キリッ


update:08/3/9