作戦参謀の調教 3





 「う……、…」

 する、と下衣から手が抜かれた。
 荒く息をつきながらデスクに額をつける。
 服を着たまま射精するなんて最悪だ。解放されたそこが濡れてべたついているのが何とも言えず気持ち悪い。

 「ああホラ、あなたので手袋がこんなに汚れてしまいました」

 くすくすと嘲笑しながら、眼前に手を回される。
 半透明の白濁にまみれたその手はべったりと濡れて、指にはりついた布地から爪先が透けてみえていて、とんでもなく卑猥な有様になっていた。
 手袋を嵌めたままそんなところを触るほうが悪いんじゃないか、と心中で精一杯に毒づきながら視線をそらすと、顎を捕らえられ、無理やりに口をこじ開けられる。

 「う、…、…んん!、…ぐ、」

 そのまま自分が出したものに塗れた指を口の中に突っ込まれる。
 慌てて顔をそらそうとするものの頤を押さえ付けられてはびくともせずに、ざらりとした布地が好き勝手に深く入り込んだ咥内を探りまわった。精液独特の匂いと味が広がる。
まさか噛むことなどできるはずもなく、舌で押し返そうとするとするりと逃げられ、上あごをくすぐられ、力が抜けた。

 「ふ、ぐ……、…」

 「手袋、外してくださいますか」

 「………」

 柔和な口調で命じられる。
 その意図を察すると、俺は仕方なく手袋の指先を噛んだ。そのまま手が抜かれる。

 「いい子ですね」

 反吐が出そうな台詞とともに、背中を押さえ付けていた手が髪を撫でてくる。
 気持ちが悪い。
 古泉と同じ顔、同じ声でもやっていることは大違いだ。
 俺の知る古泉は俺が本気で嫌がるようなことはした例がない。こんなふうに立場を利用して脅迫し、無理やり虐げおとしめるようなやり方はしない。

 「何を考えていらっしゃるんです?」

 まるで俺の心の中を透かし見ているような言葉とともに、汚れてしまった下衣がずるりと引き落とされる。


 「……!!!」


 一瞬のうちに血の気がひいた。
 手袋を外した方の掌が、背筋から這うようにして狭間をなぞったからだ。
 思わずぎゅっと身体を緊張させると、「こわいんですか?」と揶揄するように囁かれる。

 「男は初めてじゃないでしょう?」

 力無く首を振った。
 本当だった。
 古泉とお互いの気持ちを確かめ合ったあとも、未だそこまで許す勇気のなかった俺に古泉は決して無理強いを働くことはなく、たちの悪い触り合いに及んだことはあったものの、そこにふれようとはしてこなかった。

 「まさか、ご自分だけ気持ち良くなって終わるとは思ってませんよね?」

 「…っ、や!、…」

 やめろ、とこぼれそうになる悲鳴を殺そうとした瞬間、すぼみを撫でていた指先が内側にもぐりこんだ。

 「ひ、いやだ…っ!!」

 堪らず拒絶の言葉を叫ぶと、おかしそうな笑いが耳に降ってくる。
 叫ぶほどの痛みではないものの、別のなにかが体内に入ってくる恐怖と異物感に身体を強張らせる俺にかまわず、長い指がぐうっと奥まで入り込む。

 「う、……や、やだ……」

 「へえ、狭いですね。てっきり慣れているものかと思いましたが」

 まあ、その方が愉しみがいがありますけど、と勝手な台詞を吐きながら、埋め込んだ指を乱暴に動かし出す。

 「ぁぐ……、…や、………、…」

 直接内蔵をいじくられる未知の感覚に、吐き気すら込み上げてくる。
 入口の襞を丹念になぞられたかと思うと、ほとんどないに違いない隙間をひろげるようにしてもう一本、指が捩込まれる。

 「ぃあ…ッ、痛……!!」

 「すぐ慣れますよ」

 引き攣るような痛みとひどい圧迫感に、知らず指に力がこもってデスクにがり、と爪を立てる。
 嫌だ。苦しい。ぼろ、とあふれた涙が頬から伝い落ちた。

 「ん…、ぅ、く……、ぅう…」

 一旦塞きを切るとどうにもならなくなって、とうとうしゃくり上げながら泣き出してしまう。
 苦しくて痛いやら、悔しいやら怖いやらで頭の中がぐちゃぐちゃだ。しかも、こんな殆ど強姦まがいの行為を強いているのは、恋人と同じ姿をしていて。

 「あ……!?」

 ぐるりと内側の壁を引っ掻くようにうごめいた指が、一点をぐっと押し上げた瞬間、思わず戸惑いをのせた声が出た。

 「ここですか」
 「な…、……ぅあッ!、ぁ、あ!?」

 得たりとばかりに集中的にそこを圧迫され、身体がはねる。
 気持ち悪い、痛いと耐えるばかりだったはずの感覚に突如として混じり始める快感に、俺は訳がわからないまま身を強張らせた。
 信じられない。感じているのか。
 抜き差しされながら指の腹で内壁を圧される乱暴に、俺の躯ははっきりと快楽を見出だしはじめていた。

 「ぅ、あ、……ゃ、やだ…っいやだ…ぁあ!、ッひ」

 身体がおかしくなった。
 何をしたんだ!

 「ここを刺激されると、どんな男でも感じるものなんですよ。
  …前立腺、と言うんですが」

 ご存知ありませんか、とからかうような口調で問い掛けられ、俺は必死に首を振った。
 知らない。こんなのはおかしい。

 「も…、やめ、…やめて、くだ…ッあ…!」

 「駄目ですよ」

 これ以上の責め苦にはとても堪えられそうもなくてとうとう泣きを入れた俺に、残酷な囁きが耳元に注がれる。




 「あなたには、ここを弄られただけで射精できるような、
  端ない身体になって頂かないと」






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古泉が生き生きしています\(^0^)/


update:08/4/7



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