ATTENTION!
無機物×キョン@授業中
大丈夫な方はどうぞ!



















おもちゃにしないで





 せめて今日この時間が気まぐれに例の能力が発動して偶然にも自習に変更になっていたら、俺は本気でハルヒに感謝を捧げていたと思う。両手を握りしめて心から謝辞のひとつも述べていたことだろう。
 だが現実には時間割通り数学の授業真っ只中で、教師の眠りを誘う呪詛みたいな声が響いているほかは至って教室内は静まり返っている。ちなみに授業開始からまだ二十分も経っていない。
 いつもであれば昼飯を食べた直後の五限目、しかも数学とくればとっくに船を漕ぎ出していておかしくない状況だが、今日に限っては眠くなるどころか俺はノートの上一点を見定めたまま微動だにしないでいた。
 動けないわけじゃない。
 微動だにでもすればとんでもない声を上げてしまいそうなのだ。

 「……、っ」

 何でかって、体内に入っている異物の所為で。
 何がどこに入っているかなんて説明すら鬱で仕方ないが、元凶は古泉だと言えばお分かり頂けることと思う。
 要するに俺の、人には恥ずかしくて言えない普通入るところでない器官に入っているのは俗に言う大人のおもちゃ、という奴だ。何でそんなもん入れて授業を受けてるかって?そんなの俺が知りたい。
 ちなみにこれを入れられたのは昼休みが終わる直前、古泉に引きずり込まれた部室棟の男子トイレでだ。かれこれ四十分以上は経っている。

 「ご自分で抜いては駄目ですよ」

 分かってますよね、と耳元で、女子が聞いたら一発で卒倒しそうなハニーヴォイスで囁いた内容を補足すると要するに、勝手に抜いたりすればさらに酷い目に遭わせちゃいますよ、ということだ。これまでの経験則から言って。
 それを嫌というほど分かっているからこそ俺はケツにローターを突っ込まれたまま授業を受けるという、とてもお天道様に顔向けできないような状況を甘受しているのであって、決してアブノーマルなプレイに興奮している変態ではない。

 「……、っくそ、」

 口の中だけで、誰にも聞こえないよう悪態をつく。
 呼吸をするだけでも弾みで後ろがひくついてしまって、それに意識を向けると思わず強く力が入ってしまい、締めつければダイレクトにそれが粘膜越しに感じる場所を押し上げ、腰が融けそうな快楽が走る。そんな状態で顔は平静を装い勉学に励む振りをし続けなくてはならないなんて、何と言う種類の拷問だろうか。
 不規則に乱れる呼吸を悟れらないよう必死に息を潜める。
 体内で、下腹の奥のほうで動いている器具の、虫の羽音のような振動音が内臓越しに耳まで伝わってくるような気さえする。まさか外まで聞こえる筈はない、万が一聞こえたとしても気に留めるほどの音量でもないだろうし、それ以前に何の音かを察知できるわけがない。そう自分に言い聞かせても不安はどんどん増大するばかりだ。

 「……っ、ん、」

 じわりと眼球の表面に涙が膜を張る。
 見つめたノートの罫線が歪んで踊る。まだ時間はさっき時計を見てから三分も経っていない。マジかよ。
 ひく、と後孔が収縮するたびに走る快楽は暈を増していく。
 後ろを刺激されたら気持ちいい、そう古泉に教えられたせいだ。
 すべては古泉のせいであって、俺は何も悪くない。例え授業中にあれをおっ勃てていようとも、それは百パーセントこんな状態を俺に強いている古泉が悪いのであって、断じて俺に責任はない。

 「ふ……、…」

 小さく細く息を吐く。
 熱が蟠って苦しい。解放されたいと願ったところでまだ授業時間は半分丸々残っている。まだ折り返し地点だ、と思うだに絶望が押し寄せて来るようだ。
 ちらちらと教室の黒板上に据え付けられている時計とノートの間を視線で往復していると、ふと、二つ離れた列の斜め前にいる女子がこちらを振り返った。一瞬目が合ったかと思うと、すぐに視線を外し黒板に向き直った。
 何だろう。何でわざわざこっちを振り返って見たんだ。
 まさか何かばれているんじゃないか、と考えると、途端に背中がひやりとした。可能性としては非常に低いと分かっていても不安は止まらない。
 授業中、皆が集まっている教室で、ローターを尻に入れながら何食わぬ顔を装って席に座っている俺のこの有様を本当はクラス全員がとっくに気がついていて黙ったまま、俺を嘲笑っているんじゃないだろうか。いいやそんなの有り得ない。大丈夫だ誰にもわかるはずがない。

 「ねえ」

 後ろから声がかかり、俺は悲鳴を上げなかったのを自分で褒めてやりたいくらいに肩をびくつかせた。何でもない普段の顔を必死に取り繕い、中の粘膜を必要以上に刺激しないよう注意しつつ後ろを振り向く。

 「アンタ大丈夫?さっきから落ち着きないし…具合悪いの?」

 時計ばかり見ていたのが後ろにいるハルヒには気になったんだろう。
 声が上擦らないようわざと不機嫌な声を作り、大丈夫だ、と呟く。何でもない。まったくもって問題ないから何も気にせず頼むからいつもどおり寝ててくれ。

 「本当に?何だか顔だって赤いし……」
 「…、っ触るな…!」

 不意に背中に伸ばされた手を、しまったと思うより早く反射的に振り払っていた。
 俺の声でこちらに気づいた教師が授業を止めて俺を見る。ほぼ同時にクラスメイトの殆どがこちらへ視線を向けた。

 「………っ!!」

 ぎゅう、と心臓のあたりが引き絞られるように緊張する。
 冷や汗が湧いて指先から血の気が引いていく気がした。全員の視線がまるで刃物みたいに全身に突き刺さるように感じる。駄目だ、変に思われる、動揺するな取り繕え、と思うのに、言葉も出ないし身体も動かなかった。








 「やっぱアンタ変よ?保健室行ってきたら?」

 そのハルヒの言葉に、俺は是も非もなく教師に許可を得て教室を出た。
 向かう先は無論保健室ではなく、部室だ。
 教室から部室棟までの道程を気が遠くなるような距離に感じながら、当然ながらこの時間帯、人気のない廊下を出来る限りの早足で進む。進みながら片手で携帯を操作し、着信履歴からリダイヤルをかける。一回発信したあと数コールで切り、再度すぐにかけ直しまた切った。相手は勿論今頃クラスで授業を受けているだろう元凶だ。通話したいんじゃない。知らせることが目的だ。
 そうして辿りついた文芸部室に慌しく駆け込むと、ドアを閉める。
 壁に凭れかかると糸が切れたようにずるずると座りこんだ。
 しんと静まり返った部室内だと、余計に玩具の音が響いて聞こえる気がする。ずっと中途半端な刺激が辛くて、それでも止めたくても止められない。古泉の馬鹿野郎!

 「馬鹿はひどいですね」

 ドアが開き、こちらを見下ろした古泉が憎らしいくらいの微笑を浮かべる。
 教室から来たにしては早すぎる。もしや俺が途中でギブアップするのを見越してどこかで待機してたんじゃあるまいな。

 「……っ、…!!」

 お前が馬鹿じゃなかったらどうなるんだ、仮にも恋人に有無を言わせず変態プレイを強制しておいてどの口が、と詰め寄ってやるつもりが、古泉がドアに施錠ししゃがみ込んでくると、俺は反射的に古泉の首に腕を廻しすがりついていた。

 「おや…珍しく素直でいらっしゃるんですね。…そんなに欲しかった?」

 くす、と息だけで笑われる。
  嬉しそうな声に思いつく限りの罵倒を心の中で繰り返した。何が欲しかった?だ。そんなわけあるか。
 するりと背中から尻の狭間までをゆっくりと撫で下ろされる。
 それだけでもびくびくと肢体が跳ね上がった。

 「あ、あ…、っ、…、こいずみ、…っ」

 上擦った、媚びるような甘さの混じった自分の声が気持ち悪い。
 制服のズボンの中に手を差し入れられたかと思うと、窄みから垂れている中の玩具に繋がる細いコードに指が絡まる。勝手に期待するみたいに喉が鳴って、いたたまれなくてさらに強く古泉に抱きつき首元に顔を埋めた。
 くん、と強く引かれ、中で玩具の位置が変わり粘膜を擦る。

 「ひん、っ…ッ、…!!」

 弓形に仰け反った俺の喉許に、古泉が噛みつくように口付けた。




 「さあ、…どうしてほしいですか?」






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正直続きません

update:09/09/27



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