絶対的プライオリティ 2





 「あの…?どうされたんです、急に」


 追いかけて棟の玄関で捕まえると、訝しむ古泉を十五分でいいから、とだけ告げ、腕を掴み引っ張っていく。
 着いた先は社会科資料室だ。
 一昨日岡部に雑用を頼まれた際、ここは扉の鍵が壊れていることを確認済だった。
 別にこんな後ろめたい行為に及ぶことばっかり考えて、校内で人気のないところをチェックしている訳じゃないぞ。たまたまだ。

 古泉を押し込むようにして中に入ると、後ろ手に扉を閉める。
 窓はあるものの遮光カーテンがかかっていて、室内はかなり薄暗い。
 古泉がうろん気な視線で俺を見る。
 たったそれだけで、身体の奥底で埋火が煽られるのを感じた。
 浅ましいなんてもんじゃない。古泉の顔を見るだけで、古泉の声を聞くだけで、触れても触れられてもいないのに、俺は眩暈がするくらいに欲情してる。

 「こんなところで、いったい…」

 何を、と言い切られる前に、縋りつくようにして古泉の唇をふさいだ。
 驚いたのか、硬直する古泉にかまわず歯列を割り咥内に侵入すると、反応できていない舌を搦め捕る。

 「ん、…っふ、…ッ、…」

 出来る限りいやらしい音が立つように舌を動かし、柔い粘膜を掻き交ぜる。
 まるで飢えた人間が水を求めるかのように唾液を啜りこみ、わざと喉を鳴らして飲み込むと、ぴく、と古泉の舌がふるえるのが解った。
 首に廻した腕にさらに力を籠める。

 「ふぁ、…っは……」

 さすがに息が苦しくなって唇をわずかに離し、息づきをする。
 獣みたいな荒い呼吸が落ち着かない。えらく興奮してるせいだ。
 古泉はそんな俺を、少し赤らんだ顔で見つめていた。
 眼前十五センチのアップにも耐えられる整った顔を酸素不足と欲情とでぼうっと見つめながら、自らのネクタイを緩める。

 「あの、キョンく…」

 「わかってる……急いでるんだろ。十五分でいい。
  すぐ、済ませるから……だから、」

 それだけ言って肩口に顔を埋めると、ふわりと漂う古泉のいい匂いが肺を充たす。
 久々に嗅いだ気がして、それすら興奮を煽る材料にしかならない。
 ややもして戸惑っていた古泉が、俺の精一杯の懇願に応じるように背中に掌を廻してきた。



















 「そちらを…使うんですか?今日は用意がないんですが…」

 下衣だけを脱ぎ去り床に座った古泉と向かい合わせに跨がった状態で、後ろ手に自らの狭間に手を伸ばすと、古泉が俺の剥き出しの大腿に手を添えながら言った。
 用意というのはローションだのゴムの類だろう。俺の身体のことを考えてくれてのことだろうが、どこまでも律義な奴だ。

 「…、…っく、」

 返事もせずに指をつぷりと押し込む。
 久々の感覚に、自分の指だというのにぞくぞくと震えが走って、思わず、あ、と上擦った声を上げてしまう。

 「は…ッ、ぁ………ん、ん…」

 十五分じゃろくに前戯をしている暇はない。
 早々に二本目を押し入れるとわずかに痛みが走ったが、すぐに興奮に混ざって刺激に変換される。
 性感を高める為というよりは早く古泉を受け入れたくて、入り口を軟らかくしようと指を動かす。気持ちばかりが急いて、身体がついてこないのがもどかしい。
 どうせなら女みたいに自動的に濡れるようになってくれたらいいのに。
 それともこうやって古泉と繋がることばかりに使っていたら、そのうち慣れていくんだろうか。

 「んっ……」

 入り口の襞をぐっと拡げると、くち、と擦れる音が立った。
 古泉が息を飲むのがわかる。視線をおろすと、制服越しにもそこが既に反応してるのが見て取れ、興奮しているのが自分だけじゃないことに安心する。
 はあはあと熱い息を吐きながら指を抜き出す。
 震える指で古泉の下肢に手を伸ばし、ベルトを寛げファスナーを下ろした。

 「は…、……」

 完全に上を向いた陰茎を何度か指で擦りあげたあと、解した窄まりにあてがう。
 肺から空気を押し出しながら、ゆっくりと腰をおとしていく。
 数日してなかったうえ、まだ慣らし方が足りなくてやや固い入り口が、異物を拒むようにぎちぎちと悲鳴を上げたが、構っている余裕はなかった。

 早く繋がりたい。
 奥まで古泉でいっぱいにされる、充足感を味わいたい。

 「あ、あ……ッ、く、」

 「っ、まだ…きついでしょう。僕が慣らしますから、もう少し」

 古泉の台詞に首を横に振り、強引に腰を沈めていく。
 先端部分がなんとか中に納まるといくらか楽になった。ぶるぶると震える足と、古泉の両肩に置いた手で体重を支え、残りの幹を飲み込もうと身体を揺する。

 「ふっ…、ぅあ、……あ、…」

 生理的な涙が視界を曇らせる。
 内側から圧迫される苦しさはあったが、それ以上に感じた。
 俺が辛そうに眉間を寄せていることで痛みを堪えていると思ったのか、おもむろに伸ばされた手が俺の性器を包み込んだ。

 「あ…ッ!!」

 つ、と先端の孔を圧され、一気に下半身から力が抜ける。
 力が抜けるということは、当然腰の高さを加減していた両足も支える力を失うということで。

「んん!! ――ッ、っ、…… 」

 ずる、と一気に腰が落ち最奥まで入り込んだそれに、声も出せずに背中をのけ反らせる。
 衝撃にとぷりと僅かに溢れた精液が、古泉の指を濡らした。

 「っ、おま、え…、急にッ…」

 「すみません」

 ちっともすまなそうな笑顔で古泉が喉元にキスしてくる。


 「あなたの艶っぽい顔を見ていたら…我慢できなくなりました」


 言葉だけじゃない、熱い欲情をふくんだ吐息が耳元をくすぐって、それがまたぐんと育った快感を煽る。
 直接刺激したわけでもないのに、内壁が物欲しげにうごめいた。

 「我慢できないっていうなら…早く、くれよ…っ」

 媚びるというよりは泣きそうな声が出る。我ながらもっと上手い誘い方はできないものかと呆れるが、体裁を気にする余裕なんてかけらもない。
 古泉の首に縋りついて耳に唇を押し付け、


 「はやく……古泉ので、気持ち良く、して」


 精一杯の嬌態でもって囁くと、畏まりました、と恭しい、それでも興奮を隠しきれていない返答とともに腰に手が廻された。

 あと七分。
 ぼんやりと僅かに残された脳内の冷静な部分でタイムリミットをカウントしながら、少しでも早く互いが上り詰められるように、その間最大限に古泉を感じていられるように、俺は隙間も残さないほどにぎゅっと互いの身体を密着させ、小さく喘いだ。






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淫乱かと問われると (´・ω・`)?というほかない


update:08/3/6



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