38.2℃





 「風邪でしょうね」


 体温計を見ながら古泉が言った。
 38.2度。立派な発熱状態だ。

 「季節の変わり目ですからね…幸い明日から二連休ですし、ゆっくり休んで下さい」

 休みの日に病気で寝込むことほど損した気分になるものはない、などと考えてしまうのは俺だけではないはずだ。

 金曜の夜。

 家には日曜まで外泊することを届け出済だ。
 そうして古泉の家まで来てるということは、つまりはそういうつもりであったのであって。

 「……わるい」

 溜息しつつ小声で謝ると、古泉がきょとんとした表情をした。
 そしてニコリと微笑する。

 「何も謝ることなんてありませんよ」

 それよりも早く良くなってください、と首許の毛布を直しながら言う。ああくそ、こういうときに変にやさしいところを見せられると駄目だ。


 ここは古泉の部屋で。
 古泉の匂いがするベッドで。
 目の前には古泉が居て。
 正直、それで我慢できるほど老成しているわけでもない。何せ若い身体だ。

 「……なぁ、古泉」
 「はい?」
 「熱があるときにヤルとかなりイイって話を聞いたことがあるんだが、知ってるか?」
 「………いえ」
 「じゃあ実践したことは?」
 「……あなたまさか」

 したいんですか?とうろん気な視線を投げかけられ、俺は素直に首を頷かせた。

 「そのつもりでなきゃ今日ここにいないだろ」
 「それは……そうですけど」
 「お前は違うのか?」
 「そんな筈ないでしょう!」

 最後にしたのが先週の水曜。
 それまで三日と空けずに抱き合ってる。
 溜まっていないはずがない。

 「じゃあ」

 しよう、と寝転がったまま古泉の肩を引っ張ると、おずおずと顔が重なってくる。
 ゆっくりとくちびるがふれて、珍しく自分から舌を差し入れるとぴくりと古泉の睫毛が揺れた。

 「…ふ、」

 キスしたまま、古泉の手のひらが毛布の隙間から忍び込み、胸元を探る。
 シャツの上から乳首を探り当てられ、指の腹で撫でられたあとぎゅっと摘まれる。
 突然の、鋭い刺激に思わず背筋が反った。

 「んく…、ぅ……、…」
 「熱いですね…」

 苦しくなったら直ぐに教えてください、と律儀なことを言いながらも、古泉の動きは逐一俺の反応を探るものから、段々と大胆なものになっていく。

 上着を脱ぐと、古泉が布団の中に入ってきた。
 俺が寒くないようにだろう、毛布をしっかりかけたまま、中に潜り込んで身体をまさぐってくる。
 裸をさらすより、古泉が見えない分なんだかこっちの方がいやらしい。

 「ふ、……あ…、…ッ」

 すっかり立ち上がった乳首を舌先で弄られ、高い声が漏れた。
 気を善くしたように強く吸いつかれ、空いた片方には爪を立てられる。

 「ん…、っく、……」

 もじるように膝を古泉の身体に擦り付けると、察したのか手のひらが下半身にかかる。
 スウェットをかい潜り、すっかり反応しきっていたそこをやんわりと握りこまれた。

 「ひぅ、…っんん!!」

 たったそれだけのことで、先走りがあふれたのを知覚し顔が熱くなる。
 熱があると敏感になるというのは本当らしい。
 いや、それ以前に俺がずっと古泉とこうしたかったっていうのもあるのかも知れないが。

 「…っふぁ、……あ、ぅ…」

 上下に包み込むようにして扱かれ、腰が浮いた。
 ローションを使っているわけでもないのにぬるぬると滑りのいい感触に変わったのは、俺がそれだけ古泉の指を濡らしてしまったからだろう。
 熱でなのか、興奮でなのかわからないもので脳が沸騰しそうなくらい気持ちいい。

 「あっ…、ぁ、…く…、も、出る…ッこいず、」

 出る、と訴えるのと同時に、ぬるりと先端が生暖かいものに包まれる。
 そのまま搾り取るようにくちびるで扱かれ、俺は泣き声を上げて呆気なく吐精した。

 「っはぁッ…、…は…、…」

 全身汗びっしょりだ。
 熱を下げるには汗をかくのが一番だと言うが、逆に興奮で熱が上がったような気もしないでもない。
 頭がぐるぐるして、俺はシーツの上でぐったりと身体の力を抜いた。

 「眠れそうですか?」

 布団から這い出した古泉が、口許を拭いながら言う。
 ていうかまだ終わってないだろ。

 「さすがに病人相手に最後までするのは気が引けますので…
  続きは回復なさってからということで」

 曖昧な笑みを浮かべる古泉を怨みがましい視線で見つめる。
 渾身の力で起き上がり、力が入らない両手で古泉の身体を引っ張ると、
 難無く古泉をベッドに戻すことに成功する。

 「……あの」
 「お前がまだだろ」

 言いながらベルトを外しにかかると、古泉は恐縮するように両手を上げて首を振った。

 「いえっ、僕はいいですから」
 「嘘つけ。とっくに反応してる癖に」

 衣服から取り出したモノはすっかり上を向いている。
 この状態で我慢するのは相当辛いはずだ。
 状態を言い当てられてか、古泉が珍しく顔を赤くして言い淀んでいるのが
 端目にうつった。

 「喉痛いから手でもいいか?」

 上目使いに聞きつつ、両手でそれを扱っていると古泉は熱が伝染したかのように上気した顔を掌で覆って、消え入りそうな声で言った。




 「あの…、…じゃあ……お願いします」








喉が痛いからフェ●できないって言わせたかったんです…


update:07/10/30



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