「やだ、無理、…ッもう、でる…っ」
「いいですよ、出して」
そう低く囁かれたのを引き金に、一気に沸き上がる射精感にぶるりと身をふるわせる。
同時に、古泉の指が俺の一番弱いところを的確に擦った。
「やっ…、あ、あ!!」
びくん、と身体が跳ねて、精液が尿道を伝ってあふれ出す。
それは一度じゃ済まなくて、二度、三度と断続的にかなりの量が吐き出されるのは、自慰とは比べものにならないほど興奮しているからだろう。
その目が眩むような愉悦に、奥歯を噛み締めて堪えた。
泣きたくもないのに勝手に涙が滲んでくる。強すぎる快楽は苦痛と紙一重なんだということを、こうしていやというほどに身を持って知った。
「は、…ぁ、……」
ようやく波が引き、強張った身体から力を抜き息を吐くと、目尻に古泉が口づけてきた。
「気持ち良かったですか?」
そう聞かれるのもいつものことだ。
この直視に耐え兼ねる下半身の状況を見れば一目瞭然だろう、と思うのだが、こうも毎回しつこく尋ねられるのは、どうやら俺の口からそう言わしめることが目的らしかった。
「…きもちよかった」
素直にそう口にする。気恥ずかしさと倦怠感でぼうっと古泉をみつめていると、うれしそうに微笑む無駄に整った顔がゆっくりと重なってきて、俺は慣れたタイミングを外さないよう目を閉じた。
学校では教えてくれない how to
古泉の部屋。
古泉とふたりきりで、カーテンすら締め切り隠れるようにして重ねている秘密はもはや両手の指では数え切れない。
いや、週に最低でも三回はこうしているから、かけるはじめてこういう関係になってからの週数と考えればおよその概算は出るが。というか、古泉に聞けばもしかするとあいつは正確に覚えているかもしれない。
飽きもせず暇さえあれば、こうしてたちの悪い自慰の延長のような睦事をくりかえしている。俺も古泉も、毎日抜いても足りないような血気盛んなお年頃なわけだから、一度覚えた未知の快感にのめり込んでしまうのは仕方がない。
ソファの上で向かい合って、お互いの身体にふれてみたり、キスしたり。
お互いに抜き合うのは、最近では三回に一度くらいだ。
あとの二回は俺が一方的に弄られている。その点が俺としては不満なのだが、古泉いわく「あなたの感じているところを見るのが好きなんです」だそうだ。
ちょっと変質的な趣味が入ってきてないか、とも思うが、そんなふうに言う奴の顔は満足そうなので黙っている。
「ふ…っ…」
いったばかりの敏感なそこを、わざとぬめりを纏わせて軽く搾るように擦ったあと、ゆっくりと指が離れていく。
全部出したと思ったのに、その痺れるような刺激に尿道に残っていた分がじわりと鈴口を濡らす感覚がきて、だらしない反応にいっきに恥ずかしさが増した。
薄く笑みながら、古泉が甲斐がいしく後始末を始める。
用意していたウェットティッシュで汚れを拭い取り、乱れた服を整えてくれる。
そうしてすっかり何事もなかった状態に戻ると、お茶を煎れにキッチンへ向かう。それが毎回決まったルートだ。
「お茶、入れてきますね」
案の定そう言って立ち上がろうとする古泉を、シャツの裾を掴んで差し止める。
「どうかしました?」
「今日は、俺にもやらせろ」
毎回俺の方ばかりが余裕を無くさせられるのは、どう考えてもやっぱり恥ずかしいし不公平じゃないか。
目を瞬かせる古泉の返事を無視してベルトに手をかける。
無造作に中に手を突っ込み、そのまま掌に収めたそれをやわらかく揉みしだくと、古泉がかすかに息をつまらせたあと、喉の奥で笑った。
「無理しなくてもいいんですよ」
「なにが無理なんだ」
それは暗にいつまでも上達しないたどたどしい俺の技術を指摘してるのか?
「そんなわけないじゃないですか」
慌てたような声が降ってくる。
穿った解釈をしてしまうのも仕方あるまい。
古泉の指は、もはやそこがいい、などと口に出さずとも俺自身より俺の感じるところを熟知しているというのに、俺ときたらいつまでたっても古泉の余裕を剥ぎ取ることができないでいる。なんとかよくしてやりたくて頑張ってはみるものの、古泉をちゃんといかせられるまでえらく時間を食う。これでも苦心惨憺してるんだ。
俺はやる気がないんじゃない。下手なだけだ。悪かったな!
「僕にしてみれば、あなたとこんなことをしているというだけで至福の境地ですよ」
「だったら、せめてもうちょっと巧くなるよう協力しろよ」
ふてくされたように言いながら指を動かす。
親指で裏側を何度もたどると、ぐっと硬度を増したのが掌に伝わった。
そういう反応がわかるとやっぱり楽しい。にやりと唇を引き上げ古泉を見上げると、奴は赤くなった顔を掌で覆い、
「まったく…、そうやって煽ってどうしようっていうんです」
どうなっても知りませんよ、と困ったように独り言ちる。
「煽られるっていうんなら、ちゃんと集中しろ」
先端をもてあそぶように指をすべらせる。
そこがぬるついた感触をもつまでしつこく撫でた。
「少なくとも、一番初めの頃よりは随分お上手になったと思いますよ。手の動かし方が、とてもいやらしいです」
いやらしいとか言うな。しかもうれしそうに。
というか、やらしいことをしているんだから動きもやらしいものになるのは当たり前といえば当たり前だと思うが。
「一番いやらしいのはお前の顔だろ」
かすかに上気した頬とか、撓んだ眉とか。
毎回思うが、古泉の欲情している顔はエロ過ぎる。
「貴方には及びませんよ。…今どんな表情をされているか、自覚はありますか?」
ああ、五月蝿い。
しょうがないだろ、何度やっても興奮しちまうんだから。
こんなにも繰り返されているこの行為にのめりこんでいる自分を、恥ずかしいとは思っても隠そうと思わないのは、それだけ古泉を欲しているからだ。
立ったままでいた古泉が、ソファに座りなおす。
さらりと短い前髪を梳くように撫でられ、額に唇が押しつけられる。
熱をはらんだやわらかな感触と、そこからこぼれる吐息にすらぞくりとしてしまう。
「……っあ…」
伸ばされた古泉の手がぐ、と服越しに、再び中心を押した。
「また、勃ってきてますね」
おかしそうに言うな。畜生。
「もう一回抜いておきますか」と甘い声で誘われ、俺は素直に首を肯かせた。
綺麗に拭ってもらったばかりなのに悪い、とか、的外れなことをぼんやり思考する。
でも、それもしょうがない。
何度出したって、すぐにまたほしくなってしまうんだ。
そういう年頃なんだと思っておくさ。
無知だからこそ一旦覚えるとはまる!っていうのがあると思うんですがどうでしょう
ていうかまた手ですかい/(^o^)\どんだけ好きなの自分/(^o^)\
次があれば今度こそ次の…次のステップに!
update:08/1/10