光る樹液
まるでSFかファンタジーだ。
いや、まさに今俺はファンタジーもどきの世界にいるわけだが。
RPGの中なら何が起こっても不思議じゃない。
例えばこうして、
「くそ…っ、も、やめ、…ぇ…!!」
森の中で、突如意思を持ったかのように動き回る木の枝に拘束されるとか。
あってたまるか!
「あんまり動くと、さらにきつくなってしまいますよ」
楽しげな声が少し離れた場所から聞こえてくる。
これ以上に忌ま忌ましい声を俺は知らない。
凄い力で俺の両腕を搦め捕り、頭上で固定している枝さえなければ、すぐにもぶん殴ってやれるのに。
地を這うようなテンションの俺とは真逆に、白い外套をまとった見た目は秀麗な吟遊詩人は、何がうれしいのかにこにこと微笑みながら、触手かなにかのようにしなやかに動き回る木の枝を手遊びに撫でている。
いうまでもなく、この状況はこいつがけしかけた結果だ。
「このやろ…、古泉っ!…も、いい加減に…は、はな……ッあああ!!」
離せ馬鹿、と叫ぼうとした音は、下衣の中に入り込んだ樹触手が自身の根元をぎり、と締め付けてきたことで、意味を為さない悲鳴にすりかわった。
「ひッ、…いたい、痛いっ!!…こいず…」
びくびくと身体が跳ねる。
ほとんど足は地面につかず、辛うじて爪先立ちしている状態で、全体重が吊り上げられた手首にかかって辛い。
痛みに根負けして悪かった、と口走ると、急所を捉えていた触手が緩んだ。
そしてまた、さっきと同じくゆるゆると幹を上下にこすり始める。
その動きは確実に性感を煽るためのもので。
俺はぶるりと肢体を震わせながら、それに耐えるしかなかった。
「ん…、ん…っ…、ぅ…」
涙が滲む。
なんで俺がこんな目に。
こんなふうに好き勝手にされて、あまつさえ人外のものに身体をなぶられ、それに反応してしまっているなんて、いっそ首のひとつも吊りたい。
「あ…、うんん…!?、ん、ぐっ…」
息を吸い込もうと口を開けた拍子に、上から降りて来た枝がずるりと咥内に入り込む。
慌てて舌で押し返そうものにもびくともしない。そのまま樹肌に滲み始めた粘液が、どろりと流し込まれる。
「ぅぐッ、ん、んんんー!!」
甘い。樹液かなにかなんだろうか。
そんな得体のしれないものを飲み込めるはずもなく、顔を振って逃れようとしたが、
「駄目ですよ。飲み込んで下さい」
古泉の声とともに、触手にぐいっと顎を持ち上げられる。
重力に従い喉の奥に流れ落ちるそれを、俺はなすすべもなく飲み下すしかなかった。
「うっ…げほ、ッな、何……」
喉がひりつくほど甘いそれに顔をしかめると、古泉はこれ以上ない、他人が見れば綺麗な、俺からすれば恐怖にしか映らない微笑で、
「こういう触手モノのセオリーとして、その粘液を体内摂取することで齎される効果に、どのようなものが考えられると思います?」
「………!!」
知らん。俺は断じて知らんぞ。
気付きたくもない!
目の前の受け入れがたい現実から逃避してみたところで、じわじわと熱を帯びてくる身体に嘘はつけようはずもない。
皮膚を隔てた身体の内側が、やけつくように熱くなる。
それはすぐにごまかしようもないほどに膨れ上がり、俺を苛んだ。
「あ…、…あああ…!?」
「効いて来たみたいですね」
ニヤリと笑んだ古泉が、何かの合図のように指先を宙で動かした。
途端、ぞろり、と触手が皮膚を舐めるように移動し始める。
まさか。
「や…やだ……、こいずみッ、そっちは…やだぁあ…!!」
間髪入れずに予感は本物になり、堪らず俺は涙をこぼして喚いた。
両手に加え片膝を吊られるように持ち上げられ、固くて冷たい、ぬめった枝の先端が後ろの穴に押し当てられる。
古泉の指がアレしか入ったことのない場所に、ただでさえ得体の知れない触手を体内に受け入れるなんて、無理だ。絶対無理だ。ありえない。
無理、と殊更に泣き叫ぶ俺など意にも介さぬ素振りで古泉が微笑む。
「僕のでは届かないような奥の奥まで犯されるんです。快楽に貪欲な貴方のことですから、きっとすぐに気持ち良くなれますよ。触手に突っ込まれてよがるあなたの恥態なんて、これ以上ないご馳走ですね」
愉しげなその台詞を、俺は死刑宣告を聞く囚人みたいに茫然と聞いた。
このあと俺が恥も外聞もなく、古泉のじゃないと嫌だ、と泣きわめくまで二分。
ファンタジーなんて大嫌いだ!!
\(^O^)/
しるすさんの健全戦士絵から広がった樹触手ワールド
樹触手の樹液は鎧をも溶かすとかいろいろ萌えあがりました
深夜の絵チャ室はカオスですね!
もしかしてコレ初触手のような気がする!
update:08/2/26