「な…何してるんですか!?」
目を覚まして状況を把握するまで十数秒。
漸く自分が置かれている立場を覚った古泉が、今まで聞いたこともないような素っ頓狂な声を上げた。
普段の古泉一樹はかなりうまく化けの皮を被っているらしく、完全に素のこいつは思っていたよりダサいと知ったのは、こういう関係になってからだ。
こういう関係とは、まあ、お互いに寝顔を知っているような仲ってやつだな。
「そんなに驚くことかよ」
しれっと言い放つと、普段は超がつく低血圧の癖に一気に血圧が上がったらしい古泉が、真っ赤な顔で口を開閉させる。
そこまで打てば響くようなリアクションをとられるといっそ清々しい。
「おっ…驚きますよ!目が覚めて、あなたが上に跨がってたら」
同じ台詞をそのまま返そう。
自分の所業を棚に上げやがって。
俺にまったく同じことを何度したか、こいつは覚えているんだろうか。
まあ普通に跨がっているだけなら古泉もそこまで驚くこともなかっただろう。
確かに目が覚めて布団はおろか、パジャマまで脱がされ半裸状態にされていたら間抜けな声のひとつも上がるかもしれない。が、そこまでされて目が覚めなかったほうにも大いに問題があると思う。
「と…とにかく、降りていただけませんか」
「断る」
即答をかますと、古泉がこれまた鳩が豆鉄砲を喰らったような顔でフリーズする。
「雪辱をまだ晴らしてないからな」
「せ…雪辱、って」
うろたえる古泉に、普段奴が俺にするように顔を近づけてニヤリと笑んでみせると、赤い顔のまま肩をすくめて、シーツの上で身体をこわばらせる。
自分がするときはこっちのことなどお構いもなしに平気で距離をつめてくるのに、自分がされる立場となると気になるらしい。
「いくら疲れてたからって、呼び付けておいて人が風呂入ってる間に
さっさと寝る奴が悪い」
古泉が疲れているのは何も今日に限ったことではないが、最近輪をかけて忙しそうにしていた古泉は、やっとやって来た金曜の夜、あろうことか恋人たる俺をほったらかして寝入ってしまったのだ。
ちなみに今は午前1時。日付はかわってもう土曜だ。
「あ……、え、えっと…すみません」
疲れてましてつい、と、申し訳なさそうに眉を下げつつ古泉が、
首のあたりに掌を当てる。
「別にいいさ。おまえが今週あちこち駆けずり回って疲れてるのは俺も知ってるしな」
だから寝てていいぞ、と言うと、古泉が怪訝そうに顎を傾がせながら、
丸くした眼を何度か瞬かせた。
「あの…」
今の俺は心底人の悪い笑顔を浮かべている自信がある。
掌をシャツにくぐらせ素肌の上をすべらせると、びく、と古泉が肩を震わせた。
「お前は黙って寝てればいい。…俺は俺の好きにするから」
Rodeo
「ちょっ…、や、やめて下さい!待っ…」
完全に攻守逆転だ。
こういうのも悪くない。
跨ったままの俺の下で、古泉が焦った声を上げる。こんなに慌てた奴は見たことがない、というくらいの動揺ぶりにこっちがおかしくなってしまう。
シーツの上で長い手足をばたつかせるものの、俺に蹴りのひとつも入れないのは流石というところか。
愛されてるからな、俺。
「いいから大人しく寝てろよ」
「…っ寝られるわけないでしょう!」
形よく浮き出た鎖骨に口づけ吸い付くと、びく、と腕の下の肢体が反応する。
お、確かに面白いな、これは。
そのまま舌を這わせ滑らせるようにして下に移動する。指で胸板を探り行き着いた突起を、やつがいつも俺にするように音を立てて吸うと、んっ、と古泉の喉がなった。
「………っ!」
上目遣いに見上げた視界に顔を真っ赤にした古泉が写って、何だか可愛い、と思ってしまった俺も大概おかしい。
「今日は俺がやるからな。お前は何もするなよ」
わざと意地悪い笑みを浮かべるよう努めながら、下衣に手をかけた。古泉がわずかに潤んだ目でそれを見つめているのを確認しながら、ゆっくりと脱ぎ去る。
シャツをわざとたくし上げずに、後ろ手に回した指をかい潜らせて秘部をなぞる。
「…っは、」
それだけでじわじわと快感が沸き上がってくるのは、もはや俺のそこが本来の用途たる排泄器官というよりは、性器と呼ぶに相応しいまでに古泉を受け入れることに慣れているからだ。非常に遺憾なことに。
つぷ、と指を押し込むと、異物を締め付ける内壁の圧力と体温が伝わる。
「……ん…」
ぐうっと一本含ませる。
眉根をよせて鼻にかかった声をもらすと、古泉がごくり、と喉を鳴らしたのがわかって、俺は口許に浮かんだ笑みを深くした。
襲い受!襲い受!( ゚∀゚)o彡
update:08/3/21