キヌさま宅で発見した素敵設定…い、いただいてきました…
だ、だって…キヌさん書いて良いって…(超小声)


L→機械人形
月→Lを造った博士





doll





 家に帰り着くと、『ソレ』は朝ここを出かけるときと同じ格好でソファに座ったまま、新聞を読んでいた。

 「おかえりなさい、月くん」

 「一日そうしてたのか?L」

 月は上着を脱ぎ、ダイニングの椅子にかけながらうんざりしたようにため息をついた。

 「毎日毎日飽きないもんだね。たまには別に役立つことをしてみたら?」

 Lがきょとんとした表情で小首を傾げた。
 無意識だろうが、その動作は人形らしく可愛らしい。

 「役立つこと、とは?」

 「だから……掃除をするとか、洗濯とか、食事の用意とか……そういうの」

 「私にここであなたの恋人の真似事をしろ、と命令したのはあなたです。夜神博士」

 「………だから?」

 「ですから博士に『他人のために世話を焼く幸せ』というものを感じていただこうと思いまして。実際、世話好きでしょう?月くん」

 「………………ああそう」

 うそつけ。
 自分が面倒だっただけだろ。人形のくせに。

 月はまたひとつため息をついた。







 L。

 フルネームはL-2305322。
 ドールメーカーである月が自らの手で造りだした人工知能を持つ機械人形だが、主人である自分に不遜な態度をとり続ける、とんだ失敗作だった。
 その失敗作をスクラップにすることなく、こうして自宅で共同生活させるようになって早三ヶ月。

 人間のように振舞うこの人形との同棲は、蜜月とまではいかないものの、それなりだ。








 月はLの横に座ると、どさりと身体をソファに沈ませた。

 「疲れた……」

 「お疲れさまです」

 なにが楽しいのか、相変わらずLは新聞に目を落としたままでいる。

 「L」

 「なんですか?」

 「キスして」

 顔も見ずにそう云うと、横でLがあからさまに嫌そうな声を出した。

 「…………それは命令、ですか?」

 「うん、そう」

 首だけを捻じ曲げにっこり微笑んでやると、Lは視線を移ろわせてふう、とため息をひとつ吐いてみせた。

 Lは不遜でも月の命令には逆らわない。
 厳密に云うと、人形には人間に逆らえないという根幹のプログラムがあるのだが、それでも自我を持つLは嫌なことは嫌だと主張する、我侭な機械人形だった。

 「まったく……」

 渋々と、Lはソファの上に膝をつき、背凭れに手をかけると、上体を月に乗り上げるようにして顔を近づける。
 いつものようにくちびるが触れ合う一瞬前、躊躇うようにわずかに肩がふるえる。いつまでたっても慣れないこの仕草が、とても気に入っていた。

 「……………」

 やわらかく、くちびるが押しつけられる。

 すこし触れあわせただけで直ぐ離れようとするLの顔を掌で捉え、「もっと、ちゃんと」と続きを強請ると、Lはわずかに頬を薄紅に染めて、目を伏せた。

 口を少し開いて、再びくちびるが重なる。

 「ん………んッ!」

 おずおずと差し入れられてきたちいさな舌を絡めとリ、唐突にきつく吸い上げてやると、びくんと背筋がふるえあがった。

 可愛い。

 プログラムされた肉体反射だと、わかっていても嬉しくなる。

 「……ん………ふぅ…っ…」

 人と変わらない暖かな口腔をねっとりと貪りながら、掌でなんども頬をやさしく撫でていると、接吻を受け止めるのに精一杯だったLは両手を伸ばして月の首にすがりつき、ぎゅっとつよく抱きしめてきた。

 まるで、誰かが愛しいものにするように。






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