わざとなのか、そうでないのかは計りかねるが、まったくもってよろしくない第一印象を植えつけられた夜神 月との出逢いを皮切りに、しばしば校内で彼の姿を見ることが多くなった。

 私が無意識のうちにも意識して見るようになったからかもしれないが、こうしてみれば夜神 月の存在というのは、どんなにその他大勢の同じ格好の生徒の群れの中に居たとしても、およそ際立ってみえる。その容姿ゆえか、人を引きつける雰囲気ゆえか。
 実際、彼のまわりには人が絶えないようだった。
 保健室での、傲慢な王者のような態度は微塵ものぞかせることはない、まさに噂どおりの、出来すぎた優等生。

 いったい、あのギャップはどこからくるものか。

 すこし複雑な思いで彼の姿を眺めていると、必ずと云っていいほど彼と目が合う。
 そして、まるで私の心も、考えていることもすべて見通しているとばかりの不敵な表情で、きれいな微笑を浮かべてみせるのだ。
 休み時間、昼休み、放課後……

 そして授業中。


 あれ以来彼は、私の居る保健室に出入りすることが多くなっていた。








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