昼休みの終了と同時に、五限目の開始を告げる本鈴。 廊下に溢れていた生徒達の賑やかな喧騒も、鐘の音とともにまばらに消えてゆき、やがてはいつものようにしんと静まりかえったこの部屋で、飴色の髪は長テーブルに突っ伏したまま、動こうとはしなかった。 「夜神くん、授業ですよ」 デスク越しにそう声を掛けても、うん、とかああ、とか気の抜けた返事を返すだけで全く顔を上げる気配は無い。竜崎はため息をついた。 「まったく…。そんな調子でよく、あんな立派な成績が収められるものですね」 「要領ってやつじゃないの」 顔を伏せたまま、答えが返ってくる。 「次は選択教科だし。大切な授業は、ちゃんと出るようにしてる。 「それに?」 おもむろに月が顔を上げた。 「『気分が悪かったので保健室にいました』って云えば、信じない教師はいないよ」 ようするに、日頃の行い。 「狡賢いというか、小癪というか…」 「要領がいいって云ってよ」 この部屋の外では決して見せることのない、悪戯な子どものような笑み。 毒されている。 ぼんやりとそう思いながら、会話を強制終了させてふたたびテーブルにうつ伏せた、月の姿を睥睨した。 next→ |