押さえ込んでいた両手を離しても、先生の身体は教台に貼りついたままだった。 呼吸を乱したままぐったりと四肢を弛緩させ、茫然自失といった様子でうつろな視線をさ迷わせている。 僕が下着ごと下衣を膝まで引き落としても、まるで気づいていないのかさほどの反応も見せなかった。 その糸が切れた人形のような身体を肩を掴んで反転させる。 うつ伏せにしてその背中に圧し掛かったところで、ようやく抵抗することを思い出したかのように先生がのろのろと身を捩らせ始めた。 「な、にを………」 膝で脚をひらかせると、先に先生が出したもので濡れそぼった手指を尻の狭間にすべるようにして這わせる。 そうしたところで僕の意図に気づいたのか、先生は息を飲み、弾かれるようにしてつよく抵抗し始めた。 「や、嫌です……夜神く…!」 起こそうとする上体に体重をかけ、顎をその肩に預けて逃げられないよう押さえつける。 空いた片手で机を突っぱねようとする手を絡めとリ、指の付け根を擦り合わせるようにして握りこんだ。 射精した直後で力をいれることもままならない先生の身体を再び完全にねじ伏せる。 耳朶をかるく食み耳殻にくちりと舌をさしいれると、先生がぶるっと背筋をふるわせた。 そのまま吐息で囁く。 「大人しくしててよ先生。痛くしないから……」 「嫌……ぁ…」 中指で探るようにして入り口に行き当たると、なんどか慣らすようにその襞をなぞり、そのままゆっくりと内部へ押し入った。 「…………っ…」 第一関節まで入れたところで一旦止め、息を詰めて身体を強張らせる先生に「力を抜いて」と促す。 精液のぬめりに助けられて、中指はすんなりと根元まで埋め込まれた。 ぎゅうぎゅうときつく指を締めつけてくる圧力を感じ、本当にこんな狭い場所に入ることができるのか心配になる。 「先生、ここは初めてだよね?」 「………、……」 やさしく問いかけても先生は顔を俯かせたまま、ひきつった呼吸を繰り返すだけで答えは無かった。 沈黙は肯定と見なして構わないだろう。 そのまま中指を緩慢に抜き差しすると、先生は「ひっ」と背中を丸めるようにして泣き声にも似た嗚咽を漏らし始めた。 「痛い?」 「……っ気持ち…悪いです…っ」 「そう」 内部が指に馴染んできたところを見計らって、人差し指も一緒に押し込む。 そうすると、先生の喘ぎがいっそう悲痛な色を帯びてきた。 「いっ…、痛…ぁ…」 「すこし我慢して」 内部をさぐるように指を蠢かせる。襞を何度かぐるりとなぞり、指に感じたしこりの辺りを指の腹で擦った。たしか、前立腺はこのあたりだ。 「あっ…」 ある一点を探ったところで、先生の声音が明らかに変わった。 そのわずかな変化を見逃さず、指にもう一度同じ動きをたどらせる。 「ここ?」 反応が返ってきた箇所を立て続けに責めると、そのたびに先生は「あ、あっ」と可愛くないて身をくねらせた。 だらりと力なく萎えていた性器が、後ろへの刺激だけで再び頭をもたげ始めている。 初めて感じる未知の性感に混乱するように、か弱く首を振りながらもひっきりなしに声を上げる先生のその媚態に、自然と笑みがこぼれる。 「感じるんだ」 「違っ……あ、こんなの、変…ですっ…」 「変じゃないよ。気持ちいいんでしょ?……コレ」 そう言いながら指を鉤爪のようになかで折り曲げると、先生が身を反らせてひと際高いひずまった嬌声を上げた。 「ひ、あ…っ……」 「嫌」と繰り返し吐き出される言葉とはうらはらに、完全に息を吹き返した先生の性器ははやくも先端から滴を滲ませはじめている。 それをからかうようにたわむれに指で擦りあげると、先生の喉が甘く鳴った。 「嘘吐き」 「…や…ぁ……」 教台にずり上がって快感から逃れようとする先生の腰を強引に引き戻し、片手で固定すると、すでに溶けはじめた粘膜をいっそう激しく擦りたてる。 「嫌、あぁっ……あ、あっ…」 先生は机に爪をたてて身体を捩らせ、髪を振り乱して身も世もないなき声をあげた。 がくがくと膝を震わせて、僕がくちゅりと淫らな音をたてて指を動かすたびに内部の道を従順に収斂させる。 そろそろいいかな。 乾いた唇を舐めてぬらすと、確かめるように入り口を指をひらいて押し開き、ぐるりと掻きまわす。 先生がまた腰を揺らめかせてせつなくないた。 そのままずるりと指を抜き出すと、伴う排泄感が気持ち悪かったのか「ううっ」と小さな低い呻きが漏れる。 片手でジッパーを下げ、前をくつろげて自らの性器を取り出すと、先生の痴態にすっかり昂って屹立したそれを指の代わりに入り口に押し当てた。 あたう限り優しく、その耳元で囁く。 「力抜いてて、先生…」 指とは違うその感触と熱に、先生がぎくりと身体を強張らせた。 構わずにぐっと腰を進め、指で入り口を開くようにしながら張り出した先端をその狭い襞に押し入らせる。 「ひっ……い、痛た…あぁ……!!」 押し引き裂かれる痛みに、先生が悲鳴をあげて身を捩らせた。 一瞬に全身を苦痛に強張らせ、その目から堪えきれない涙が数滴滴り落ちる。 ともすれば大きな声を上げそうな先生の口を片手で塞いだ。 あまり騒げば放課後で残っている人間もまばらとはいえ、誰に気づかれるとも限らない。 逃げようとする腰を捕らえ、異物を拒むように締めつけてくる内壁を引き剥がすように一気に力をこめて侵入する。 「ん、うぅ…───!!」 先生の苦痛を訴える悲鳴は僕の手のひらに吸収され、くぐもって消えた。 半分ほど入ったところで脚を更に大きくひらかせ、小刻みに揺すり上げるようにして残りを埋め込んでいく。 腰を動かすたび、先生の口から「うっ、うっ」と苦しそうな呻きが漏れる。 その口元を覆っている手に、先生の目から零れた涙がとめどなく垂れ落ちてきて甲を濡らした。 先端が通り抜ければ、あとはわりかし容易に根元まで埋め込むことができる。 何度も揺すってようやく全てを収めおえると、僕は痛々しく震える背中に額を擦りつけてふう、と長く息を吐き出した。 初めて男の侵入を許したその狭い内道は、はいり込んだ異物を吐き出そうと絡みつくように強く収縮を繰り返している。 苦痛の逃がし方をまだ知らず、際限なく締めつけてくる其の感触は快楽というよりは痛みに近く、僕はちいさく呻いて瞼に皺を刻んだ。 「ちから、抜いて……先生」 「ふっ…、…うぅ……っ」 できない、と云わんばかりに嗚咽をあげながらなんども首を横に振る先生の太股を、安心させるようにさすってやる。 「大丈夫だから……ゆっくり息、吸って」 そのまま手を滑らせ、挿入のショックで半ば萎えてしまった性器に指を絡ませた。 ゆるゆると緩慢に扱いてやれば、先生の喉が「ん…」と艶めいて鳴った。 少しづつ力を取り戻してきたそれに丁寧に愛撫をあたえ続けると、きつく締めつけてくる内部がわずかに緩みをみせる。 「先生、息。楽になるから……云うとおりにして」 荒まった呼吸を抑えこんでそう囁くと、先生が震えるくちびるでいびつながらもなんとか空気を肺に送り込んだ。 呼吸に合わせ内壁が緩んだところを見計らって、かるく腰を突き上げる。 「ひっ、あぁ……っ」 性器全部で襞を擦りあげられるその強烈な感覚に、先生の顔が苦痛とも快楽ともつかぬかたちに歪んだ。 喉から引き絞るように吐き出される悲鳴じみた嬌声に、血液が逆流するような激しい興奮を覚える。 つながっている。 抱いているのだ、 先生を。 衝動にまかせてめちゃくちゃに揺さぶりたくなるのをなんとか堪えると、わずかに腰を引き、抜け出たそれを再び中に埋め込んだ。 そうやって動かすたびに柔い肉壁が従順に収斂し、襞がぞろりと絡みつくように蠢く。 侵入物を拒絶していたはずの其処が、大きさに馴染むにつれてまるで飲みこみたがるような動きへと変化を見せはじめていた。 「んっ…う、う…っ……」 段々と早まる注挿に合わせて、先生が吐き出す呼吸とともに呻きを漏らす。 壁一枚隔てて快楽とはちがうものを訴えるその声に、僕はわずかに挿入する角度をかえて、先生の内部に存在する性感帯をさぐった。 先ほど指で覚え込ませた、先生が反応をかえした箇所を探し当て先端でつよくこすりあげる。 途端、先生が高い声を放って身を捩った。 「ここがイイの?」 「…っ……やぁ…っ」 なんども執拗に同じ動きを繰り返して責め立ててやると、先生は髪を振り乱して理性を飛ばしたように身悶える。 ふるえてそそり立つ性器の先端からは、触れてもいないのにすでに透明な滴があふれては床に糸をひいて垂れ落ちていた。 完全に後ろへの刺激が苦痛より快楽が凌駕したことを、その千々に乱れた様から見て取れる。 僕はその細い腰を両手で抱えなおすと、手加減なしになかを穿ちはじめた。 「ひ、っ…ああ、あ、あっ…」 はげしく揺さぶられてしゃくりあげながら涙を溢れさせる先生は、初めて味わう深い悦楽に耐えるように、うつ伏せた教台にぎりぎりと爪をたてている。 その力を込めすぎて白んだ指を絡めとるように掌に収めると、腰を揺らめかせたまま先生の耳元にくちびるを寄せた。 「ねえ、先生……気持ちいい?」 言葉の端に滲む乱れた息はもはや隠しようがない。 質問が聞き取れていないのか、それとも答えられる余裕が無いのか、先生は声帯のリミッターが壊れてしまったかのように、ただ激しい呼吸の狭間で意味のない喘ぎを吐き続けていた。 握っていた手をはなすと、放ったままだった先生の性器に手を絡ませる。 腰をつよく打ちつけながらその動きに合わせて扱きたててやると、二点への同時に与えられる鮮烈な刺激に、先生はひどく乱れて泣きじゃくり始めた。 びくびくとうねるような収斂を繰り返す内壁に、限界が近いことを知る。 「先生、気持ちいいって云って。……ねえ」 囁きながらも容赦なくその身体を責め立てた。 律動は、募る欲望の分だけ強さを増していくばかりだ。 「あ…っ、あ、あッ、…夜神、く…っ……!」 瞬間、先生が四肢を突っ張らせて二度目の放埓を迎えた。 同時に僕を咥えこんでいる後孔がひときわ大きく収縮する。 不意に熱く締めつけられて、僕は思わず喉の奥で呻きをかみ殺した。 包み込んだ指の隙間を這って吐き出される体液がぼたぼたと滴り落ち、すでに汚してしまっていた床を更に濡らしていく。 「…う、うっ……ぅ……」 ぶるりと全身を震わせながら、溜め込んだ精液をすべて出し終えたのを見計らって、再び先生の腰を抱え直した。 「力、抜いてて」 がくがくと痙攣して崩れ落ちそうになる身体を支え、教台に押しつけると今度は自らの解放を目指して激しく腰を穿ち始める。 「うっ……あっ、ああ……!」 ぬるりと吸いついてくる熱い粘膜を強引に引き剥がすようにして注挿すると、達したばかりなのにも関わらず先生が艶めかしい嬌声を放って身をくねらせる。 その淫らがましい嬌態に例えようもなく激昂した。 柔らかく淫惑な感触を愉しむ余裕すらなく、眩暈がするような強い快楽に半ばひきずられるようにして先生の体内にどろりと精液を吐き出す。 なかに出されたのを感じとったのか先生は「ううっ」と低く呻くと、ひきつらせていた身体を徐々に弛緩させた。 ずるずると崩れる身体を腕の中に巻き込み、強く抱きしめてその黒髪に口づける。 荒い呼吸を整えようともせず、意識を手放した先生のこめかみに唇を押しつけたまま囁いた。 「……好きだ、先生…」 next→ |