ルール オン ジェラシー 10





 「……、ん…」

 低く屈み込み、未だ粘液で濡れそぼつ鈴口に舌を伸ばす。
 ちろりと舌先を固くすぼめて露を滲ませる孔をふさぐように弄ると、手で支えた幹がぐっと硬度を増した。
 わずかに舌の上に広がる苦味に顔をしかめる。
 どうしてもこの味にだけは慣れることができないが、ここは我慢するしかない。
 唾液を塗すようにひとしきり舐めていると、焦れたように古泉の手が髪をまさぐってくる。

 「ん、…く、……、」

 大きく口を開き、限界まで奥に飲み込む。
 お互いに床にしゃがみ込んだ体勢ではかなり息苦しくて、なかなか根元までは届かず、出来うる範囲で頭を上下させくちびるを使って愛撫すると、ふ、と古泉が悩ましげという表現がぴったりくるような吐息をこぼした。
 我ながらぎこちない口淫だが、少しは気持ちいいんだろうか。
 先端からは口を離さず目だけを動かし様子を伺うと、古泉はわずかに頬を上気させ、眉をよせつつ俺を見下ろしていた。思わずドキリとする。なんというか、エロいとしかいいようのない表情だ。

 「…ほんとに、夢でも見てるんじゃないですか、僕は」

 夢だろうが現実だろうが、これが最初で最後なのに違いはないぞ。
 自分からこんな恥ずかしい真似するなんて、一度で十分だ。

 「んく、…ん、ん……」

 口が届かない部分は指をすべらせるようにして刺激しつつ、完全に立ち上がったものを横から舐めたり吸いついたりして丹念に愛撫する。古泉がやるみたいに、わざと卑猥な音を立てながら。

 「ふ、…ぅ、……っ…」

 ずっと無理な姿勢で屈み込んでいるので段々首や腰が疲れてきて、床に片肘をついた。
 ふと、古泉に頤を掴まれる。促されるままに口を離し顔を上げた。

 「この体勢では辛いでしょう」

 優しげに微笑みつつ、伸ばされた手が俺のブレザーを脱がしにかかる。
 抵抗する理由もないのでされるままに脱ぐと、古泉は、自分もブレザーを脱ぎ去りまとめて古びた教卓の上に置いた。
 粘液で濡れた顎を拭いつつ何をする気なのかと古泉を見上げていると、掴まれた腕を引かれる。

 「僕の身体を跨いで貰えますか。…いえ、頭を反対に」

 訝しみつつも言うとおりにすると、ちょうど足を伸ばした古泉に背を向けて跨がり、古泉の足先の方に正面を向ける形になる。確かに、この方が体勢的にはさっきよりもいくばくか舐めやすくはあるのだが。


 「今日はあなたの口で、満足させていただけるんですよね?」


 嬉しそうに言われ、俺は羞恥に唸りつつ不承不承頷いた。
 ここまで煽っておいてなんだが、昨日の今日で最後までされるのは辛いものがある。
 今朝ほどではないにしろ、未だに後ろに違和感が残っている。
 それなら口で奉仕するほうがまだいいだろう。

 「ん、…」

 古泉の腹部に乗る形で上体を屈める。
 再び屹立したものに舌を絡めると、古泉の手が腰にかかった。
 何を、という間もなく前に回り込んで来た手が器用にベルトを外しにかかる。

 「んん…!?」
 「口を休めては駄目ですよ」

 くすくす笑いながら窘めるように、抗議しようとした俺の頭を口を離せないように押してくる。無防備に喉を圧されて思わずえづきそうになるのを何とか堪えた。
 そうこうしているうちに、下衣を引きずり落とされる。

 「う、んんッ、…!!」

 反射的に腰をもじらせ逃れようとすると、動けないようぐっと腿を腕で固定された。
 もう片手がするりとあらわになった性器を掌で搦め捕り、それだけでぞくりと肌があわ立つような感覚に、勝手に身体から力が抜けてしまう。
 代わりに頭を押さえていた手が離れ、俺は慌てて顔を上げた。

 「っは、…や…、やだッ古泉…!!」

 「ふふ…触ったわけでもないのに、もう反応してますね。
  僕のを舐めながら興奮したんですか?」

 「………ッ!!」

 笑い混じりにわざと羞恥を煽る言い方で身体の変化を指摘され、俺は二の句を継げずに真っ赤になって口を開閉させた。
 眩暈がする。
 とんでもない格好だ。
 古泉の上に自ら跨がって、あまつさえ自分の目にもふれないようなあられもない場所を古泉の眼前に晒している。

 「いやだ…っ、こんなの…」

 覇気のない泣きそうな声でそう訴えるが、古泉は意に介したようすもなく、

 「何でも、していただけるんでしょう?」

 云い諭すように言ったあと、唐突に掌で包んでいたそれにべろりと
 舌を這わせてきた。

 「ひッ…、…!」

 跳ね上がる腰を押さえ付けられ、ちゅ、と濡れた音を立てながら先端が飲み込まれる。 生温い咥内に包まれ、吸いつかれる刺激に背筋がぞくぞくと強張った。

 「ん、やっ…、ぁあ…、!!」
 「くち、止まってますよ」

 知り尽くされた弱い部分をくりくりと刺激されながら勧告され、俺は息を乱しつつもなんとか口を開いて先端部分をほお張った。気を抜けばすぐにも達してしまいそうな感覚に、じわりと生理的な涙が浮かんでくる。

 「ふっ…、は、…、」

 くちびるで扱き立てるように愛撫する。
 ぬちぬちと鳴るいやらしい音が、咥内から直接鼓膜を揺らす。
 同時に下半身から聞こえてくる水音と脊髄を伝わる甘く強い愉悦に、脳内にわずかに残った思考するスペースさえ奪われていく。

 「ん…、…ん、く、…」

 恥ずかしさと気持ち悦さが混ざり合って、段々と陶然としてくる意識に溺れそうになりながら、俺は自分自身を追い立てるみたいに夢中で目の前の肉塊を愛撫した。
 古泉の口の中でとろとろと先走りを滲ませるそれに、かり、と甘く歯を立てられる。
 あまりに鮮烈な刺激に、びくっと大きく身体がはねた。

 「ひぅ…、ッん んん…!!!」

 古泉に口を離すよう請願する間さえなく、だめだ、出る、と思った瞬間、根元を支えていた掌がぎゅうっと幹を握り放埒をせき止める。
 解放を赦されず、行き場を無くした悦楽が体内に蟠る辛苦に知らず涙が溢れ出た。

 「いっ、痛、ぁ、あ…、ッなん…」
 「駄目ですよ、先に達っては」

 いきたければ先に僕をいかせてください、とからかうような声音で残酷に囁かれる。
 古泉の手が離れれば、それだけでもう達せそうなほどに高ぶっているというのに。

 「…っ意地わ、りい……」
 「なんとでも」

 精一杯の文句も軽く往なされる。
 こうなっては古泉は、梃子でも口でいかせるまで射精させてはくれないだろう。
 いきたければ、言うとおりにしてさっさと終わらすしかないということだ。

 「ん、く…、…んん、……ふ、っ…」

 どろどろにぬるついたものを深くくわえ、舌で柔らかい皮膚を揺する。
 顎も頬もべったりと汚れて気持ち悪い。何度も咥内に溜まる苦味の混ざった粘液やら唾液をすべて一緒くたに飲み下した。
 丹念に舐めて吸って、考えつくだけの技巧を試しても、それでも先走りこそ滲むものの古泉がいきそうな気配はまだない。

 「ふ、…う……!?」

 口の動きに集中していると、それを邪魔するかのように古泉の指が後ろを割り開き、窄まりをなぞりあげてくる。
 おどろいて腰を退こうにも、性器を握られたままではそうもいかない。
 親指と人差し指で粘膜を拡げられたかと思うと、


 「ふぁッ、あ、ぁあ…!?」


 ぬる、とぬめった柔らかいなにかが、入り口をこじ開けようとしてくる。
 瞬間それが古泉の舌だと悟った。


 「やッ、いや、だ…ッ古泉、それ、やだ…あ…!!」


 あまりの事態に、俺は恥も外聞もなくやめて、と泣いてすがった。

 当然だろう?
 通常排泄器官としての役割を果たすところを他人に舐められてるんだぞ。

 「きた、ない…から…ぁ、あ… !」
 「汚くなんてありませんよ。可愛いです」

 そこにかすかに触れる吐息にすらびくつく。
 周囲を慣らすようになぞっていた舌先が、うごめきながら中に割りこんでくる。

 「ひ…、ぁあ…、あ…ッ、……っ」

 内壁に有り得ない感触があたり、俺は奉仕することも忘れて啜り泣いた。
 昨日の蹂躙で未だ熱を持ち腫れているそこを、唾液を塗り込むように舌が擦る。
 恥ずかしい、やめてほしいと思うのに、欲深い身体はその思いとは裏腹に、その古泉の舌での愛撫にしっかり快感を感じていた。

 「ふっ…、く…、…ん、んん…」
 「気持ちいい、ですか?」

 舌を引き抜かれ問われる。
 俺はぎゅう、と背筋を丸め顔を伏せながら首をふった。

 「嘘はよくないですね。…こっち、今にも弾けてしまいそうですよ」

 笑いながら軽く上下に扱かれ、堪らず嬌声を上げてのけ反る。
 出口を求める熱が体内で毒をもっているかのように、苦しい。

 「ここ、舐められて気持ちいいんでしょう?素直に仰ってくだされば、
  すぐにいかせて差し上げますよ」

 「……っ、…」


 ごく、と滑り落ちた唾液で喉が上下する。
 いきたい。今すぐに解放されるものならされたい。でも…。


 「……っち、いい…」

 「聞こえませんよ?」


 「……ッ!! きもちっいい…から…!!」


 ほとんど泣き叫ぶようにしてそう口にすると、屈辱のあまり眩暈でぶっ倒れそうなほど顔が熱くなった。最悪だ。


 「…よく言えました」


 この上なくうれしそうな声と共に、古泉がさっきまで舌を入れていた場所に長い指をもぐらせてきた。その指が的確に前立腺を押し上げると同時に、入り口の縁から隙間を拡げるように、再び舌が這入りこんでくる。


 「ひッ や、ぁあああ…ッ!!…」


 管をふさいでいた手が離れ、一気に溜め込んだものが尿道をかけのぼる。
 目の前が白くスパークした。


 「あ…、あ…、…ぅあ…」

 大量の精液を古泉の腹の上に吐き出しながら、長く続く、いつまでたってもおちてゆかない絶頂にびくびくと身をふるわせる。
 指を引き抜かれる感覚にすら、う、と声をもらすと、古泉が満足げに喉を鳴らしつつ内股をなでた。


 「可愛いですよ…とても。あなたのこんなにいやらしくて恥ずかしいところを
  見られるのは、僕だけなんですよね?」



 当たり前だ。
 こんな恥ずかしい真似、見たがるのもさせるのもお前だけに決まってる。



 そう口に出せたかどうかも曖昧なまま、絶頂直後の気怠さに身を揺蕩せながら、俺は促されるままに再びくちびるを開いて、古泉のものに舌を這わせはじめた。






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あと一回!


update:08/2/18




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