美しく深い森 4

















 「あ、…あ…、…っ…、…」

 肢体が断続的に引き攣る。
 脈動のように繰り返す絶頂の波が退くまでの間、尿道から直接精液を啜られるおぞましい感覚に翻弄され続けた。
 どのくらいそうしていたのかは分からないが、体内から溢れてくるそれが無くなったのだろう、漸く細い管が外へと出ていった。
 ぞわぞわと悪寒にも似た余韻にただ忙しなく呼吸し、ぐったりと弛緩した肢体を引き攣らせながら呻く。
 俺がイっている間もお構いなしに後ろを犯していた管がまた、ぐうっと奥へと押し込まれ仰け反った。反射的に締め付けはするものの、散々拡げられ擦られた其処は管の大きさを覚え込んだみたいに緩んで、既ににそれの動きをきつく阻むほどではない。
 まるでそうやって俺の身体の準備が整うのを待っていたかのように、ぼこん、と内部で茎が脈動した。

 「ひ……」

 ぼこぼこと中で薄い膜越しに何かが移動する。
 種子を生みつける気なんだ、と悟っても、すでに身体はぐずぐずで抵抗どころか腕を動かすことすらままならない。

 「う、…っやら、…っぁあ、…」

 ひとつ、ふたつと数が数えられそうなほど過敏にされた内壁に小さな、球状のものが押し込まれていく。その度に埋め込まれた茎が嬉しがるように脈打つ。それを逃れる術も無いままに泣きながら甘受するしかなかった。

 「ひ、ッ……う、うぇ…っ、こ、いず、…、…」

 あまりの事態に頭はもうろくに働かず、地面に頬を擦りつけながら、ただつらくて悲しくて助けてほしくて、こいずみ、こいずみ、と、呼んだって何にもなりはしないのにその名前を掠れた泣き声で呼び続けた。
 その間にも、お構いなしに触手の排卵行動は続く。

 「ん、ううぅ…、っ、…」

 全てを埋め込み終えたのか、種子の分いくらか体積の萎んだ管が体内から出ていく。
 咥え込んでいた質量が無くなって、はくはくと入り口が呼吸に合わせてひくつく。
 いったいどのくらい中に入っているのか。腹の奥に蟠る酷い異物感に、しゃくり上げる度に苛まれる。力を入れればごろ、と内部でそれらがぶつかる気がした。
 これからどうなってしまうんだろう。
 このまま解放されるんだろうか。それともまだ続くのか。
 種を植え付けられたと言っても、発芽する前に体内から出してしまえば孕まずに済むんじゃないか、と廻らない頭で考えたが、それは直ぐに絶望に取って変わった。

 「あ…、あう、…っ、んんん…!!」

 背後でまた触手が動く気配があり、ずるん、と、また体内に管が捩込まれる。
 さっきの茎とは違う。先端だけがやたら太く幹部分が細くなっているそれは先ほどよりも一回り小さく、遠慮もなしに蹂躙された所為で緩んだ後孔は最早、殆ど抵抗もなしに異物を受け入れてしまう。腫れて赤く充血しているだろう内壁を擦りながら、容易に種子を埋め込まれたところまで行き着いた。
 まさか、と、背中に冷や水を浴びせられた錯覚がした。
 さっきの種子を生みつけたやつが雌蕊なのだとしたら、これは雄蕊なんじゃないだろうか。だとすればこいつの目的はひとつしかない。

 「い…っやだぁあ…!!いやだ、やめろ…っ、」

 泣いて頼むからやめてくれ、と訴えて何とかなるなら最初からこうはなっていない。
 こいつに嬲られている間中何十回と懇願したからな。
 つまりは俺の必死の哀願など綺麗に無視して、その雄蕊は種子へと向かって、要するに俺の体内へ、大量の粘液を迸らせ注ぎ込んだ。

 「……っあ、あ、…あ、…、」

 もう悲鳴も出ない。
 文字通り触手の射精と言っていいそれはひたすら続き、どくん、どくん、と幹が脈打つたびに奥へとどろどろの液体が浴びせられる。中に出されている。思いっきり。
 泣くだけの余力もない。このまま死ぬんじゃないだろうかと思うほどに身体は疲弊しきっていて、そのくせ体内で発火しそうなほどに苛む熱は引くことを知らない。茎が動くたびに、出来ることと言えばただ身体をびくつかせるのみで、完全に抵抗がなくなり獲物が従順になったことを確認したのか、雄芯が抜け出ると同時に腰や足を拘束していた蔓が退き、漸く解放される。と、同時に糸が切れたように俯せに倒れ込んだ。
 もう指一本だって動かしたくない。
 そのままその場にうずくまっていると、まるで慈しむように身体をぬるぬると撫でていた触手が降りていき、足首へと絡まった。
 ずる、と脱力しきった身体が引っ張られる。
 まさか沼へと引きずり込む気なのか、と脳裏を過ぎったが、抗うことはおろか気を抜けば直ぐにも落ちていきそうな朦朧とした意識に、身体は俺のコントロール下を完全に離れてしまって動かない。強烈な睡魔に似た眩暈に目も開けていられず、そのまま瞼を下ろした。
 気絶してはいけない、きっともうそのまま目覚めることが出来なくなる。
 足の爪先が水面に触れる。
 駄目だ、このままじゃ本当に、と思った瞬間、


 古泉が俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。







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update:09/10/05



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