一般棟MS-108シャワー室 2

















 しつこいようだが念を押しておくと、幕僚総長と呼ばれている古泉と俺は、恋人同士であるものの身体の関係はいまだない。プラトニックといっていい。
 古泉はずっと俺がそういった性的な経験がないと思い込んでいるし、実際ハルヒ、もとい涼宮閣下のいないあの世界へ紛れ込むまではその通りだった。
 あちらの世界にいる白い詰襟を纏った古泉──司令、と呼ばれる男に出会うまでは。
 どのくらいの長さだったのかは最早覚えてもないが、短くない時間、俺はあの古泉の手の中で散々いろんなことを覚えこまされた。
 この身体のどこをどうされれば気持ち良くなるのか。
 男の受け入れ方から、苦痛を逃がし快感を得る方法。奉仕の仕方。
 例えば口でするときはどう舐めるのか、どう触れれば男を悦ばせられるのかとか、思い出すだけで舌を噛み切りたくなるようなことばかりだ。
 どれだけ忘れたいと願っても、毎日のように古泉やらその部下やらに玩ばれ続けた身体は、それが例えどんな酷い仕打ちであったにしても、一度覚えた快楽をなかったことにしてはくれない。
 それはこの身体に触れる奴がいなくなったとしてもだ。

 実際、こちらに戻ってきてからこの方、俺はずっと熱を持て余し続けていた。
 何度自分で慰めてみたところで収まる気配すらないじくじくとした埋火に昼も夜も苛まれ、辛かったのは事実だ。それが顔に出ていたのだとしたら、こいつらの言う物欲しそうな顔、というのは当て嵌まってしまうのかも知れない。
 それでも抱かれるのが誰でもいいわけじゃない。
 唯一してほしいと思える古泉には、どうしたってこの身体を見せることなんて出来ない。 例えチェーンピアスの跡が無かったとしても、身体の外側の痕跡が消えても中身はそうはいかない。いくらなんでも古泉だって、抱けば初めてどころか自分以外の誰かに許した、汚れた身体だと気づくだろう。
 そうして嫌われるのが怖い。もし捨てられてしまったら?
 もうどうしようもないんだ、俺には。
 どうすることもできない。










 「ふ…ッ、うぅ、…んー…!!」

 ぬちゃぬちゃと粘液が擦れる音が響く。
 ただでさえ音の響くシャワールームは小さな喘ぎや水音や、布擦れの音さえも増幅させ、それが羞恥を更に煽り立てる。
 聞くに堪えない音を立てているのは、俺の馬鹿みたいに大きく開かされた足の間、厳密に言うと誰にも見せられない筈の恥ずかしい場所に埋められた男の指、だ。
 たっぷりローションを纏ったそれは簡単に中に滑り込み、好き勝手に粘膜を擦り立て弄りたくって入り口を拡げようとしている。
 ぐり、と腹側に指を曲げられ押されると、それだけで悲鳴になり損なった声とともに腰が跳ね上がった。

 「やっぱり男慣れしてんじゃないですか……こんなに濡らしちゃって」

 指摘するように、先走りを噴き零す先端を指の腹で撫でられ、また声が出る。
 性器に触れられたのはそれが初めてだというのに、俺の其処は今や完全に上を向き、その言葉通りにまるで漏らしてしまったかのようにびしょ濡れだった。
 後ろをいじくられるだけでいけるような変態にしたのは古泉であって、俺の責任じゃない、と自分に言い聞かせてみたところで現状は変わらない。
 これじゃあ合意の上ととられても仕方がないじゃないか。

 「んっ、ん、ん…、…あぅ、…っ」

 リズミカルに指の先から根本まで抜き差しされ、ねだるような声が鼻から抜ける。
 勝手に腰が抽挿に合わせて揺れる。相手は部下で、これはレイプで、反応してはいけないと思うのに、身体は勝手に久々に与えられる快楽にみっともなくしがみつく。

 「凄い…三本飲み込んじゃった。…もう入りそうだし、入れますね」

 ずる、と乱暴に引き抜かれ、また腰が震える。
 はあはあと舌を覗かせて忙しない呼吸を繰り返していると、背後の男の指が咥内へ入り込み、フェラチオさせるように好き勝手に犯し始める。押し返そうとしても逆に深く押し込まれ、舌を扱くように撫でられる。その感触にすら感じた。浅ましいばかりだ。

 「………っ」

 ベルトの金具を外す音がして、ローションで濡らされた穴へ熱いものが当たる。
 条件反射のようにひくりと、襞が疼いた。


 「………、…ふ、ッく……、う、んんンん…!!!」


 身体を強張らせる間もなく、固い質量を持ったものが体内へ押し入ろうとしてくる。
 ここ数ヶ月受け入れることをしていない、狭い器官を無理やりにこじ開けられる衝撃にびくびくと身体が跳ね上がったが、背後の男に両足を開いた状態で固定され、縛り上げられた腕は用を成さない。

 「きつ…っ」

 力抜いて、と勝手なことを抜かしながら、男が両手で尻たぶを左右に割り開くようにして、更に強引に突っ込もうとしてくる。ぶわりと涙が湧いた。苦痛からだけじゃない。
 まだ入ってくる。奥まで、はいってくる!

 「う、うく、ッ…、ふあ…、あ…あんん…!!」

 咥内を塞いでいた指が抜かれ、唇との間に涎が銀糸を引く。
 同時に艶めいた声が溢れるように口をついて、男達が囃すように笑うのがわかった。

 「尻に突っ込まれるのがそんなにイイんですか?涎垂らしちゃって」
 「ほら、参謀殿がもっと欲しいってよ、早く動いてやれよ」

 からかわれながら唾液に塗れた指で乳首をこねられ、完全に泣き声が上がる。
 連動しているように侵されていく後孔が奥まで入り込む楔を嬉しがるように収斂して、それがまた腰が融けていきそうな快楽を生む。

 ああ、ずっとこうしてほしかったんだ、俺は。
 これが欲しかった。

 中々緩みを見せない粘膜の抵抗に焦れたのか、男が腰を掴むと力任せに揺さぶりたててくる。ぐいぐいと突かれると同時に中が引き攣れ、視界が明滅した。

 「う、ああッ、ひ…、駄目、イ、っ、あ、もう…!!」

 ぐぷんと男のものが根本まで入り込む。
 それと同時に、俺は大きく肢体を震わせ精を放っていた。
 数度に分けてあふれ出たゆるいゼリー状のそれは、べっとりと自身の胸元から腹を濡らし、肌を舐めるように垂れ落ちていく。
 前にろくに触られることのないまま、部下に強引にケツに突っ込まれて射精したとか、どうしようもない。もう俺はこの場で舌噛んで死んだほうが矜持の為じゃないか。
 案の定男達は予想以上の反応だったのかそれを指摘し、囃し立ておとしめる言葉を浴びせて来る。

 「…、…あう、…っ…」

 ぬち、と卑猥な音を立て、一旦埋め込まれた楔が引き抜かれまた押し込まれた。
 絶頂を迎えたばかりの敏感になった其処をすぐさま擦られ、きつすぎる感覚にぶるぶると太股が震える。




 無論これで解放されるわけはない。





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update:09/09/11



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