一般棟MS-108シャワー室 3

















 それが脈打った直後じわりと腹の奥に生暖かい感触が広がって、また中で出されたのだとぼんやり感知する。
 だからどうということもない。既に中は数回分の射精で注がれた精液やらローションやら体液やらで相当に悲惨な状態になっているから、今更プラス一回出されたところで変わりは無い。いちいち反応するのも億劫だった。
 それでも散々いたぶれて尚、そういう用途にない筈の内壁はまるで男の精を余さず飲み込もうとするかのように異物を食い締め痙攣する。

 「あぅ…、…あ、…っ、…」

 ずる、と射精を終えたそれが身体の外に出ていく。
 栓を失って奥から逆流したものが後を追うように溢れ出し、閉じきらない入り口が卑猥な音を立てて混じり合った粘液を吐き出す。既に幾度と無く繰り返されている蹂躙に、俺の身体のどこもかしこも精液やら何やらに塗れ、タイルの床にも垂れ落ちぬるぬると滑るような惨憺たる有様だった。

 「ひう…ッ…、んん、!!」

 直ぐさま空洞を塞ぐように指が這入り込む。
 ぐぽぐぽと聞くに堪えない音を立てて、中にたっぷり絡みついた粘液を掻き出そうとする。神経が薄い粘膜の上に剥き出しにされているかのように過敏になり、代わる代わるに咥えこまされたせいで真っ赤に腫れているだろう其処を擦られる拷問じみた快楽と苦痛に、まるで身体が別の意思を持っているみたいに痙攣し跳ね上がった。あんまりぐちゃぐちゃに濡れてると愉しめないからな、と下卑た笑いと共にねっとりと耳の穴を嬲られる。
 ということはまだやる気なのかこいつら。

 「ひっ…、ぅ、……もう…、やだ、……でき、な…」

 力無く首を振ると同時に、頭上へ引き上げられ戒められた手首が軋む。
 既に皮膚が破れているのかも知れない。ちりちりとした痛みが手錠の当たる部分に走る。

 「でもここはまだ欲しいって言ってるみたいですよ?ホラ…中の、ここんところもっと擦ってほしいって」

 この上なく愉しげな嘲笑と共に、ぐり、と的確に、指が鉤爪のように曲げられ柔らかい粘膜の一点を押し込む。
 途端に目の前が白く明滅し、悲鳴を上げて仰け反った。

 「ひい…っ、や、あ ぁああ!!!」

 肉壁越しに前立腺をこりこりと弄られ、それだけでもう涸れたと思った涙がどっと湧いて来る。同時にこぷ、と性器の先端が勢いのない精液を漏らすように吐き出す、それはもう射精とは呼べない絶頂だった。

 「あ…、あ、……あ、」
 「まだまだイけるじゃないですか…ねえ?」

 乱暴に指が抜き出される。と、目の前に居る先刻まで本番を強要していた男を手伝って、膝が胸につくほどに両脚を大きく開き押さえ込んでいた背後の男の掌が離れた。
 拘束するものがなくなり漸く脚を降ろしたところで、ずっと開かされっぱなしだった所為で筋が固まってしまったみたいに動かず、閉じることもできない。
 もう一人の男が立ち上がる気配があり、がちゃがちゃと金属同士ののぶつかる耳障りな音がしたかと思うと、バルブに固定されていた手錠を繋ぐ鎖が外され、腕を降ろすことも赦される。

 「あ、……、…」

 かといってそれで解放されて終わりな訳はなく、そのまま背後の男に背中を押され、前のめりに粘液で汚れたタイルに枷を嵌められたままの両手をつく。
 要するに四つん這いだ。
 膝をついて尻を上げるよう促される。今度は背後の奴の番らしい。
 前をナイフで破かれたうえ、不穏な液体でどろどろにされた上着を、ぐい、と大きく捲られ背中が肩甲骨の辺りまで露にされる。尻肉を両手で掴まれ左右に拡げられた。
 まるで其処がどうなっているのか見たがるように、いや実際そうしているのだろう、もっと腰を上げるよう力づくで誘導され、体重が両腕にシフトする。そうしたところで長いこと不自由な形で拘束されて痺れた腕では身体の重みすら支え切れず、そのまま床に突っ伏した。

 「い、やだ…っ、うう…、…っ」

 見るな、と訴えて意味があるはずもない。今更だ。
 羞恥プレイか何かの一環のつもりなのか、背後の男は散々男を受け入れさせられた其処が今どうなって、どんな色になっているかまで詳細に口にした後、怒張したブツを押し当てた。

 「は…っ、ァ…、あ、ぁああ…!!」

 ずるん、と引っ掛かる気配もなく肉茎が一気に奥まで埋まる。
 いくら掻き出したとは言っても未だ内壁を濡らす残滓と、初めのころと違って俺が疲弊しきった身体にろくに力を入れることも出来なくなっている所為だろう。
 決して受け入れることを赦しているからじゃない、とほんのわずか残った矜持を誤魔化してはみても、またいっぱいに拡げられ充たされた身体の内側が、続きがほしいと媚びるように男を締めつけているのはどうあっても事実だ。

 「すげ、さっきより具合良くなってんじゃん……こんなにいっぱい犯して貰ってもまだ足りないんですか?参謀殿」

 とんだ淫乱ですね、と揶揄され、掌でゆるりと背中を撫でられる。
 それにすら肢体が勝手にびくつき、結果として中の異物を締め上げる悪循環、だ。

 「う、…あッ、んんん……!!!」

 まるでそういった身体の反射を愉しむように其処此処を撫で回したり吸いついたりしていたかと思うと、唐突に抽挿が開始される。
 腰骨の辺りを引き寄せるように乱暴に掴まれ、逃げを打つことも赦されず強引に穴を穿たれる。太く硬い楔が一気に引き抜かれ、かと思うと奥の奥を突き破らんばかりの勢いで埋め戻される。その度にぐずぐずになった粘膜が引き攣れ悲鳴を上げ、俺は身体をのたうたせて狂ったように泣き喚いた。
 肌と肌のぶつかる音と、獣みたいな男の荒い呼吸と嘲笑、粘液の泡立つ音、饐えた雄の臭い、喉が壊れたみたいに勝手に上がる俺の、自分の声とは思えない甘さの混じった泣きじゃくる声。
 頭がおかしくなりそうだ。実際そうなっているのかも知れない。

 「あんまりいい声で泣くと、人が来ちゃいますよ?」

 目の前の男が、虫けらのように床に這い蹲って頬をタイルに擦りつけている俺を侮蔑の目で見下ろし、まるで忠告めいた調子で言う。

 「まあ、あの克己的で実直な作戦参謀が部下に尻を犯されて、女みたいにあんあん鳴いてるところなんていい見世物にはなると思いますけど。金取れるかも知れませんね」

 言いざまに唇が弓なりに歪む。
 すっと血の気がひいた。
 まさかその言葉が本気だとは思わないが、こいつらならやりかねないかもしれない。
 万が一にも他の奴らにこんなシーンを見つかりでもしたら、無論こいつら三人だけじゃ済まないだろう。それどころか、俺が部下に輪姦されたというのは周知の事実になるだろうし、いや、最悪被害者とは見做されないかも知れない。公になれば軍に居られないの話じゃない。皆知られてしまう。
 古泉に。

 「…っ、…!?」

 精液がこびりつき疎らな束になった髪を、横にいた男に掴まれ無理やり顔を上げさせられる。乱暴なやり方に顔を歪めると、薄く開きっぱなしだった唇にいきり立った性器の先端を押しあてられた。

 「ほら、これ以上声漏れないように塞いどいてあげますよ」

 噛んだりしたらわかってますよね、と笑い混じりに忠告され、ぐっと顎の付け根を圧される。嫌悪感から思いっきり眉をしかめたところで無駄だ。口をこじ開け熱を持ったそれが突っ込まれる。

 「んっ、…んぐ、…う、ンん…!!」

 上と下、両方から好き勝手に犯される。
 ねちゃねちゃと響く卑猥な音が体内から聞こえてくるようだった。
 後ろを突かれながらフェラだなんてそんな器用な真似ができるか、と心の中で毒づいては見ても、結局くぐもった喘ぎ声にしかならない。頭を押さえ込まれながら尻を犯される時と同様に抽挿され、喉奥まで無遠慮に先端を押し込んでくる。
 ちゃんと吸って、と命令され、下手に背いて更に不興を買うのも損にしかならないと思い、必死に唇を窄めてその肉塊に吸いついた。

 「んっ、んっ、…んっ…、…」

 男が抜き差しするたびじゅぽじゅぽと猥雑な水音がたつ。
 ろくに呼吸もできない。酸欠で息が上がる。
 苦しい、と、思った瞬間、ピピ、という電子音とともに閃光が走った。
 驚愕に目を見開き光源に視線だけを向けると、薄ら笑いを浮かべた男が手にしたデジタルカメラをこちらに構えている。


 絶望に何も見えなくなるような気がした。






----------------------------------






update:09/09/21



4へ→